うず
喫茶店は子どもの居場所として安全か
平日の午後6時をまわる夕暮れ時、コーヒーと軽食を提供するよくあるチェーン店で人を待つことにした。カウンターでコーヒーを受け取り、席につく。ふと見ると、店内の一人掛けに小学生高学年の少年が一人で座っている。都心のこのショップは、普段は会社員やリモートワーカーで一杯だ。親子連れや学生も立ち寄るが、夕暮れ時のこの日は客もまばらな店内に、小学生の一人客が珍しかった。
アイスコーヒーを片手に、立てかけた本のページを落ち着かない様子でめくり、そわそわとショップに出入りする人ばかり気にしている。ペンケースの中身を出し入れしたり、コミックを出して読んだり。すぐ近くに交番がある立地から、このあたりは比較的安全なのかもしれないが、小学生がコーヒーショップで一人過ごしながら勉強する様子に、違和感を覚えた。
30分ほどして、少年の母親と妹と思われる二人連れが、少年に近づいてきて小声で話をしている。(ああよかった。一緒に帰るのか。)と思ったら、数分後、母親と妹は手を振って、店の外に出て行った。少年はまた一人に。
何か事情があったのだろう。この店にはよく来るのだろう。近くに住まいがあるのだろう。勉強ならばすぐ近くに図書館もあるのでよさそうだが。他人ごととはいえ気になったが、この小学生を、店員も他の客も全く気にとめていない。声掛けしようかどうしようか、迷った挙げ句に、結局何もせず店を後にしたが、後味が悪かった。
あの子どもは無事に帰宅しただろうか。これからもショップで過ごすことがあるのだろうか。安全な国と言われる日本も、今や凶悪犯罪が増加している。日々生活する中での適切な判断が安心・安全な毎日に通じるのではないか。都心の安全な居場所という点から考えさせられた出来事だった。
(こゆ美)