ガス・電気代が2倍になった国(上)
ロシアの西欧へのガス供給停止は、エネルギー市場に大きな混乱をもたらした。一例を挙げよう。ミュンヘンの地域エネルギー企業シュタットヴェルケ・ミュンヘン(SWM)は昨年11月3日に、「電力卸売市場での調達価格などが高騰したため、2023年1月1日から電力料金を約2倍に引き上げる」と発表した。
同社によると、電力1キロワット時当たりの価格は24.97セントだった。その価格が、23年1月1日からは147.9%多い61.89セントにはね上がった。
この結果、毎年2500キロワット時の電力を消費する家庭が月々支払う電力料金は、これまでの62.71ユーロ(8779円、1ユーロ=140円換算、以下同じ)から122.7%増えて、139.64ユーロ(1万9550円)になった。年間電力料金は、752.53ユーロ(10万5354円)から1675.67ユーロ(23万4594円)に高騰した。
これまで、電気代の値上がり幅は、1年間に2000円~7000円程度だった。それが23年には、一挙に約13万円も増えたのだ。しかも、SWMが引き上げたのは電力料金だけではなかった。同社は昨年10月18日、「ガスの調達価格が高騰しているので、23年1月1日からガス料金を大幅に引き上げざるを得なくなった」と発表した。この結果、毎年2万キロワット時のガスを消費する家庭では、月々支払うガス代が159.17ユーロ(2万2284円)から、307.41ユーロ(4万3037円)に増えた。つまり、約93%の増加である。
私は、SWMから電気とガスを買っている市民の負担がどれくらい増えるかを計算してみた。その結果、年間電力消費量2500キロワット時、年間ガス消費量2万キロワット時の家庭では、昨年1月に37万2820円だった電気とガス料金の負担が約37万円も増えて、75万1100円になることがわかった。エネルギー費用が1年間で約101%、つまり2倍に増えたのだ。
昨年11月には、日本でもある電力会社が家庭向けの規制料金(国の規制を受けている電力料金)を約31%引き上げるというニュースが流れた。だが、これもドイツでの100%を超える料金引き上げに比べると、まだおとなしい方だ。私はこの国に33年間住んでいるが、これほど急激な値上げは一度も経験したことがない。
(つづく)
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92