<05/08/18> バンクラプシー・リモート |
2005年8月3日の生保版にとある相互会社の基金をアセットバックにした特定目的会社発行の特定社債に対してS&PがAマイナスの予備格付けをしたとの記事がある。その格付けの理由の一つとして当該特定目的会社が「バンクラプシー・リモート(倒産隔離)性を有する特別目的会社としての地位を確保している」としている。 この場合のバンクラプシー・リモート「倒産隔離」とは何だろうか。 通常、倒産隔離といった場合は信託法を源にする考え方である。受託者が倒産したとき、受託者の固有資産と区別されている信託財産については、強制執行の対象とはならないし、また破産財団に組み入れられることもないとしている(信託法16条)。これはそもそも信託が委託者の意志の貫徹と受益者の利益を旨とする制度であり、その趣旨を確実にするために信託法に設けられた特別の規定である。それでは上記の社債発行元の特定目的会社について同じことがいえるかというと、事情は異なる。 資産流動化に関する法律はその発行元の様態によって特定目的会社制度と特定目的信託制度に区分される。特定目的信託制度は主に信託会社において用いられるものである。特定目的信託制度では当該制度の冒頭に「信託法」「信託業法」が援用されることから、資産区分の明確化などがなされれば倒産隔離については問題がない。しかし、ここでの倒産隔離は特定目的会社の倒産隔離なので、その法的背景は明確ではない。しからば、その根拠はというと基金債権の譲渡における真正譲渡等の法的構成ということになる。これについて小林秀之上智大学教授は次の6点を挙げている。 (1)契約書(スキーム)全体からの当事者の合理的意思、 (2)対抗要件の具備、 (3)譲渡価格の妥当性 (4)対象資産の質と比較したリコース率(劣後ないし買い戻し部分の比率)の合理性、 (5)会計上のオフバランス化、 (6)特定目的会社の独立性の確保 真正売買は倒産隔離を確実にする最も重要な用件であり、そのために幾重にも組織的な構成をして原債権者がキャッシュフローに関与しないようにし、またそのためのリーガルオピニオンを取り付けることになるのであるが、信託法のような実体法の背景を持たないために最終的には司法判断をまたなくてはならない。 (2005年8月3日日刊 1面)
保険用語研究会 |
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