保険仲立人は、平成8年の保険業法改正に伴って正式に発足した制度である。一般的には保険ブローカーとも呼ばれており、欧米では保険募集の中心的な役割を担っている。
日本における保険仲立人の定義は、「この法律において「保険仲立人」とは、保険契約の締結の媒介であって生命保険募集人及び損害保険募集人がその所属保険会社のために行う保険契約の締結の媒介以外のものを行う者(法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)をいう。」(保険業法第2条第21項)となっている。法令上の定義はやや分かりにくい表現になっているが、要するに保険代理店のように保険会社の委託を受けて保険募集を行うのではなく、保険会社からは独立・中立の立場で保険契約の媒介を行う者あるいは企業ということになる。
保険契約を求める顧客が、保険仲立人を利用する場合には、まず保険仲立人を選定して指名する必要がある。この指名により保険仲立人は、次のような権限を持つことになる。なお、指名にあたっては顧客から保険仲立人に対して指名状を発行することによって選任したことの証とするのが一般的であるが、現在のところ法的に明記されているものではなく、顧客と保険仲立人との間のトラブルを回避する目的で使用されている。以下の権限については、日本仲立人協会作成のフォームによるものである。
@ 顧客の保険プログラム作成のために、顧客の関係取引先に対して、リスクの調査・分析に必要なデータの提供や協力を求める権限
A 現在付保されている保険会社から過去の事故履歴、既払い・未払い保険金の状況などの情報開示を受ける権限
B 保険契約条件の確認、変更、確定、増額、減額、払済、返戻金算出、解約等に関して引受保険会社と直接交渉する権限
C 新たな保険契約の引受けについて,保険会社から見積りを取る権限
D 現在の保険契約の内容、保険料率、保険料算定方式や現在の補償内容の詳細について調査する権限
E 引受保険会社から被保険者負担額または財務上の資料等顧客の情報の開示を受ける権限
また一方で、保険仲立人は、顧客から委託を受けてその顧客の二―ズに最もふさわしい保険商品を求めて保険会社と交渉し、その中から保険会社と保険商品を選択し、これをアドバイスしなければならない忠実義務がある(業法第299条)。さらに、特定の業種や顧客のニーズに合致する保険商品の提供が困難な場合、それに代わる商品・仕組みのアドバイスができることになっている。
実際に保険仲立人となるためには、内閣総理大臣の登録を受けなければならない(同法第286条)が、登録にあたってはいろいろな条件が定められている。
@ 保険仲立人業務を的確に遂行するのに「充分な能力」があることを要する。そのために、日本仲立人協会によって損害保険仲立人試験および生命保険仲立人試験が定期的に実施されており、これに合格した場合には資格取得者として登録することが可能となる。
A 保険代理店との兼営・兼業は禁止されている。したがって、保険代理店の役員及び保険募集に従事する従業員が保険ブローカーを兼ねることはできない。
日本における保険仲立人(保険ブローカー)制度も定着し認知度も上がりつつあり、大企業や外資系企業や独立行政法人などを中心に保険仲立人を媒介として保険契約を締結するケースも、徐々に一般的になってきているとのこと。保険仲立人の役割が、より強く求められるようになるであろう。
(2006年3月16日 日刊 3面)