保険証券は、保険契約の成立を証し、その内容を明らかにする「証拠証券」である。すなわち、世間でいう「設権証券」でもなければ「有価証券」でもない。なお、それが保険契約の成立を証するものであるところから「債権証書」ともいわれ、また、その所持人が他のものと併せて本人であると推認され、その者への弁済に際し(保険会社が、契約者貸付をなす場合等)、弁済者が善意・無過失であれば、後に無権利者に対して支払いをなしたことが判明しても、債権の準占有者への支払として弁済者は免責されるところから「免責証券」ともされている(民法第478条に「債権の準占有者になしたる弁済は弁済者の善意なりしときに限りその効力を有す」とある)。したがって、保険証券のもつこれらの性質から、この交付が契約成立の条件をなすものではないこと、これまた先に述べたとおりである。保険証券は保険契約者からの請求により、保険者が作成して交付すれば足りるものであるとされているが(商法第649条第
1項、同第683条第
1項)、実際は保険会社が、生命保険契約が締結された証拠としてこれを発行し、その交付をもって契約承諾の通知に代えているのが通例である。
(2005年10月25日
日刊 7面)