<06/06/12> 保有契約価値
保有契約価値とは、現在の保有契約が将来生み出す利益の現在価値を言い、2005年度決算から住友生命が開示を開始した。もともと、保有契約価値は株式会社のエンベデッド・バリュー(Embedded Value、以下EV。潜在価値。別項参照)を構成する要素であり、数年前からいくつかの生保株式会社が開示してきたが、住友生命は、相互会社としては初めて、保険会社の長期の利益を表す指標として開示を開始したものである。
 株式会社のEV計算上の保有契約価値は、保有契約の生み出す利益の現在価値から「資本コスト」を控除するのが通例である。「資本コスト」とは、責任準備金を超えて保持することが求められる必要資本について、現在価値評価に使用する割引率と運用利回りの差から生ずる利息差を用いて計算され、いわばリスクに充てるための資本を保有することによる負担を控除するものである。なお、今回保有契約価値を開示した住友生命は、資本コストをゼロとしている。
 保有契約価値は、
(1)運用利回り
(2)契約残存率
(3)保険事故発生率
(4)事業費率
(5)評価利率(割引率)
などの設定いかんで水準が大きく変わる性質がある。このこともあり、欧州ではこれらの設定方法を基準化・共通化することが試行されている。
 また、これらの条件が変動した場合に、保有契約価値にどの程度の影響があるかを示すいわゆる感応度分析も重要な情報であり、わが国でも保有契約価値と併せて開示が行われている。
 (2006年6月5日 日刊 1面)
保険用語研究会