日本における貿易保険は、従来は経済産業省主管の独立行政法人日本貿易保険(NEXI)が独占的に引き受けていたが、2005年4月からは民間に開放されることになり、海外における経験・ノウハウを多く持つ外資系保険会社を中心に、貿易保険の取り扱いが徐々に始まっている。
貿易保険は輸出取引信用保険とも呼ばれ、輸出会社が被保険者となり、海外取引先の倒産や債務不履行による支払遅延(信用危険)や、貿易相手国の輸出制限・戦争・内乱・天災など(非常危険)の発生により、輸出不能や代金回収不能になった場合の損害に対して、一定割合を保険金として支払う保険である。ただし、「貿易」というと輸出と輸入に限定される印象も受けるが、NEXIをはじめ貿易保険を取り扱う会社では、輸出・輸入のほかにも、海外投資や海外融資といった取引に付随するリスクも引き受けている。
さて、この2種類のリスクを分けて、非常危険のみを対象とするものを、一般的に「ポリティカル・リスク保険」という名称で呼んでいる。一般的にポリティカル・リスク保険がカバーするのは、被保険者の取引先や債務者が、その国の政府により担保資産を収用・没収・国営化された、または国外への送金や通貨兌換を停止された、あるいは担保資産への政治的暴力により不払いを起こしたケースであり、取引先や債務者に責任のないリスクを担保するものである。
もう一方の信用危険を扱う保険を、「トレードクレジット保険」や「クレジット保険」などの名称で呼んでいる。この保険がカバーするのは、ポリティカル・リスク保険の場合と異なり、被保険者の取引先や債務者に責任がある場合のリスクである。
日本において取引信用保険が認可されたのが1994年とまだ歴史が浅く、まだあまり馴染みの薄い保険かもしれないが、国際間の取引がますます活発となる一方で、世情が必ずしも安定しない現代社会においては、なくてはならない保険の一つである。
(2006年8月14日 日刊 1面)
保険用語研究会