<05/10/13> 会社役員賠償責任保険(D&O保険)
コーポレートガバナンス(corporate governance)(企業統治)の観点から、平成5年商法改正により、その一つとして株主代表訴訟の制度が取り入れられた。
それに伴い、会社役員の責任を追及する代表訴訟が多く提起されてきた。その結果として、取締役らの会社役員らの損害賠償責任が肯定された場合に、それへの支払能力の問題が問題となる。そこで,欧米で普及している会社役員のための責任保険であるD&O(Directors and officers)保険が普及してきている。
会社役員賠償責任保険は,会社を保険契約者として、被保険者を会社役員(取締役・監査役)とする責任保険である。対象となる責任は、役員の会社に対する責任と第三者に対する責任の双方であり,一般の責任保険と同様に,被保険者が有責の場合に賠償金額を損害としててん補する。保険事故は,約款上、一般の責任保険における事故発生説とは異なり,請求説によるものとされている。
本責任保険における問題点は、特にその反公序性にあるとされるため、会社役員への違法行為に対する警告的、抑止的機能を持たせるため、各種免責条項の設定(免責事由としても,法令違反を認識しつつ行った行為や利益相反取引による責任など詳細な事由が規定されている。)して、役員らが職務の執行にあたり緊張感を欠き、不注意になりかねないのではないかという批判に対応する規定としている。
また、会社による保険料の支払いは問題についても、多数説は、取締役らの役員は会社からの保険料相当額を含む額の報酬(商法2 6 9条)となる一方、代表訴訟で会社に対して善管注意義務違反等により有責とされた場合に損害てん補をする部分については,特約として独立して役員個人が自ら保険料を支払としている。
(2005年9月21日 日刊4面) 保険用語研究会