<05/11/14> 告知・診査が不要
損保系生命保険会社が銀行窓販の第三次解禁に対応して「一時払終身積立」を投入するとの記事に関連して。
通常生命保険の販売にあっては告知・診査が必要とされるが、銀行という限られた被保険者選択を要求される場面では「告知・診査が不要」というものが要求される。
このような商品にあっては、商品構成が次のような特徴を備えるものが多い
・一時払であること
・契約当初の死亡保障としては既払い込み保険料を返還する
これによって、当初の死亡危険を回避し、もって危険選択に代えるタイプの商品である。
さて、このような商品はかつての簡易保険においては当然の事柄であったが、民間生命保険が全くこの分野に手をつけたことがなかったか、というとそうではなかった。
昭和25年に出版された粟津清亮著「華西俗談」第2巻133頁に明治32年11月に日本アクチュアリ会が成立し、その第一回目の会合で「研究討論の議題として、日宗生命のアクチュアリ楠秀太郎氏の考案によって主務省へ認可申請された自選生命保険の計画を取り上げた。」とある。粟津氏の文章をもう少し引用すると「自選保険とは加入者の身体診査を行わず、健康の自信を根拠として無診査で加入せしめ、その代り或期間中の死亡に対して全然保険金を支払わぬか、又は一定削減額を支払う方法で、其大要を一言すれば今日(昭和25年当時)政府の実施して居る簡易生命保険と同巧異曲の創案である。」としている。明治32年当時は簡易保険の制度がなかったことから、このような保険の導入に対していぶかしく感じるものがあり、まずは発案者たる日宗生命で実施してみてしばらく様子を見よう、ということで、認可申請に及んだが、この保険は結局認可にはならなかった。これに関して粟津氏は「(主務省)参事官連は無診査は詐欺者(罹病者)の進入する危険がありとして」否認された、と記している。
(2005年11月15日 日刊 1面) 保険用語研究会