<05/12/01> 人材派遣 |
保険業界を対象とした人材派遣が活況のようだ。 言うまでもなく「人材派遣」とは、仕事に就いて収入を得ることを希望する人が、人材派遣会社に登録をして仕事を探し、そこからの派遣先で仕事をすることである。正社員やパート、アルバイトなどとは異なり、人材派遣の場合は、あくまでも労働者(派遣社員)と人材派遣会社との間の雇用関係であり、給与の支払や社会保険などは人材派遣会社が受け持つ。人材派遣会社の事業運営や実際に派遣される労働者の労働条件などについて規定しているのが、いわゆる労働者派遣法(正式な法律名は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備に関する法律」)である。 この労働者派遣法は1985年に制定されたものだが、経済・社会環境、生活様式、就業意識、等々の変化に伴って法改正がこれまでに数回行われてきており、法律制定時から大きく変わっている部分も多い。たとえば、人材派遣の対象業務としては当初は13の業務に限定されていたものが、現在では医療などを除いて原則自由となっていること、派遣期間が当初9か月(一部1年)に限られていたものが、現在では3年(専門的な26の業種では本人が望む限り無制限)となっていること、ならびに派遣先での直接雇用をにらんだ採用前のトライアル的な人材派遣(「紹介予定派遣」という)が認められるようになったこと、が挙げられる。 話を保険業界に絞ってみると、人材派遣については当初は保険会社本体への派遣労働者の受入れが中心であった。保険会社内部における業務の機械化・高度化が進む中で、知識や経験とともに一定の判断を必要とする業務と、専門的ではあるが判断をあまり必要としない業務との切り分けがしやすくなったこと、若い層を中心として社員の就業意識が変化してきたこと、そして人件費圧縮が重要な経営課題の一つとなったことなどを背景として、派遣社員の利用が急激に広まった。大手保険会社の多くは人材派遣業を専門とする子会社を設立し、その中には自分の親会社以外にも積極的に派遣を行う本格的な会社もある。 一方、最近話題となっている保険代理店従業員への人材派遣や、銀行窓販解禁をにらんだ銀行への人材派遣は、比較的新しい形態である。ただし、保険代理店の従業員あるいは店主の後継者探しといった需要は昔からもあり、従来は保険会社が自社を退職した元社員を個別に紹介するなどをして対応していた。それが今や人材派遣業として成り立つようになったわけであり、保険業界における資格を有する人材の需要とそこに応募する人々のニーズとがうまくマッチしていたと言えよう。 (2005年11月09日 日刊 1面)
保険用語研究会 |
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