<06/01/16> 他保険契約の告知・通知義務違反と免責(商法644条)
損害保険の約款には、同一目的物につき保険事故、被保険利益および保険期間を共通にする他の保険契約が存在する場合には、これにつき告知義務があり、保険契約者がこれに違反すると保険者は契約を解除できる旨の明文の規定があり、この約款が有効であることに疑いはないが、約款の制限的解釈の必要の有無や具体的な制限の仕方には問題がある。判例は、右の告知義務違反が手続上の軽微な背信行為であることを前提として、これに基づく契約解除権を制限的に解釈し、告反要件のほかに「不法な保険金取得の目的」ないし、保険契約者等に「保険制度を悪用する意図」があったことを保険者が証明することを要求し、この証明がないことを理由として重複保険告知義務違反による保険者の契約解除の主張を排斥したものも少なくないが、逆に解除を肯定した判例も増加しつつある(東京地判昭61・1・30判旨「重複保険の告知義務に違反した場合には保険契約を解除することができる旨の約款があっても、不法な保険金取得の目的をもって重複保険契約を稀結するなどの事由がない限り、保険者が保険契約を解除することができないとされた」)。
ただし、生命保険の分野においては、まだ、他社契約告知・通知に関する明示の約款が設けられていないので、その導入の可否につき検討する必要があろう。
(2005年10月24日 日刊 3面)保険用語研究会