<06/05/02> ディスクロージャー
ディスクロージャーということばを英和辞典で引くと「露見、発覚、暴露、摘発、発表」などとある。元々は「他人に見られないように覆いを掛けて隠していたものが明らかになったもの」という、ややネガティブなニュアンスが含まれるようである。その意味を含んでいるのか、現在では「企業の経営内容を公開すること」という意味で用いられることが一般的になっている。
保険業界に限っていうと、ディスクロージャーに関しては、保険業法第111条の規定がまず一つの根拠となっている。同条第1項には、「保険会社は、事業年度ごとに、業務及び財産の状況に関する事項として内閣府令で定めるものを記載した説明書類を作成し、本店又は主たる事務所及び支店又は従たる事務所その他これらに準ずる場所として内閣府令で定める場所に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならない。」、第2項には、「保険会社が子会社等を有する場合には、・・・当該保険会社及び当該子会社等につき連結して記載した説明書類を作成し、・・・公衆の縦覧に供しなければならない。」とあり、「公衆の縦覧に供する」という古めかしい表現が用いられている。また、同条第4項には、「保険会社は、第1項又は第2項に規定する事項のほか、保険契約者その他の顧客が当該保険会社及びその子会社等の業務及び財産の状況を知るために参考となるべき事項の開示に努めなければならない。」、とこちらは「開示」という表現が用いられている。
第1項および第2項でいう「内閣府令に定める」とある保険業法施行規則第59条の2と第59条の3に規定されている内容を見ると、貸借対照表・損益計算書を始めとして株式会社であれば有価証券報告書に記載されている事項とかなり重複している。ちなみに、貸借対照表・損益計算書は、「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」第16条第2項に基づき「公告」しなければならない。また、有価証券報告書は、「証券取引法」第24条に基づき内閣総理大臣に提出し、同法第25条に基づき内閣総理大臣はそれを「公衆の縦覧に供し」なければならないとなっている。
現在保険会社が一般的に「ディスクロージャー」と呼んでいるのは、先の保険業法第111条第4項に基づく「開示」によるものである。生命保険・損害保険業界ともに、各保険会社が「ディスクロージャー誌」を作成するにあたっての統一基準を決めており、毎年度その内容の見直しが行われている。ただし、この基準は、開示することが望ましい基準を示しているにすぎず、実際には各社の判断でこれ以外の項目についても開示している会社が多い。
(2006年4月24日 日刊  1面) 保険用語研究会