<06/07/03> 統計的見積り
損害保険会社におけるIBNR備金の積立ルールの整備および保険計理人の確認業務の強化等が行われ、この5月1日から施行実施となっている。その中で、損害保険会社におけるIBNR備金の積立対象を地震、自賠責を除くすべての保険契約に拡大するとともに、スクリーニングを行い、ロングテイルで重要性のあるものは統計的見積法によりIBNR備金を算出し、ロングテイルで重要性のないものおよびショートテイルのものは一定の算式を用いて積み立てることとなった。
IBNR備金とは、既発生未報告損害備金、すなわち保険業法施行規則第73条第1項第2号に規定するまだ支払事由の発生の報告を受けていないが保険契約に規定する支払事由がすでに発生したと認める保険金等に係る支払備金のことであるが、ロングテイル、すなわち保険金の支払いが完了するまでに長い年数を要する割合が高い保険種類で、しかも重要性のあるものについては、従来の一定の算式を用いた積立方法に替えて、統計的見積法によりこれを算出することとなったものである。
さて、統計的見積法の定義については法令等には具体的に記載されていないが、本件に関する改正趣旨から判断すると、アクチュアリー学でいう統計的見積法を指すものと解釈するのが最もふさわしいのであろう。統計的見積法とは、「保険事故の経験統計の分析を行い、その中に現れた一定の規則性に着目し、将来もこの規則性に変化がないものとして統計の未知の部分について推計を行う方法である。」と教科書には書かれている。さらに、統計的見積法を手法的に分類すると、保険金統計のみを用いる方法の例として、チェインラダー法、最小2乗法などがあり、また件数統計と保険金統計の両方を用いる方法の例として、発生保険金単価予測法、未払保険金単価予測法、分離法など、さまざまな手法がすでに存在しており、またさらに新しい手法も研究・開発されているとのことだ。
欧米の損害保険会社においては、統計的手法を用いたIBNR備金あるいは支払備金の見積りがアクチュアリーによってごく普通に行われているところが多く、日本もいよいよそれに一歩近づいたことになる。
(2006年6月21日 日刊 3面)保険用語研究会