うず
仏式落語会
某大学の落語研究会が「仏式落語会」をやるというので見に行った。ただし、仏教落語会ではない。留学生、帰国子女、専攻する学生によるフランス語を使った落語会である。昔第二外国語として学んだものの、完全忘却の彼方(かなた)になっている言語だ。
初級編の日本語交じりの演目は、新装開店で従業員募集をしたら、なぜか「ボンジュールとフランス語で入ってくる」「さんざん語学力をアピールして、えっお客は日本人ですか?なら辞めます」などの変な応募者ばかり。応募者はみんな表の張り紙を見たという。よく確かめてみると、『仏式道具店』と書いてあった…。その店は「墓(はか)なく潰れました」というオチだった。
続く中級編は半分以上がフランス語、そして、留学生がその日の主任(とり)を取った上級編のフランス語だけの演目まで、最後は外国映画と同様に会場内の字幕投影に助けられながら、日本文化としての落語とフランスのエスプリの合体を楽しむことができた。
落語には、他の外国においても英語におけるユーモアなどその国独特の文化と親和性があると感じた。この会を企画した若者たちの才能、才覚に驚かされるばかりだった。
その昔、生保業界なら外国語は必要ないだろうという姑息(こそく)な理由で志願した老コラム子の時代とは隔世の感がある。会の終了後、同行した同業他社のOBとの完全日本語での飲み会も、後半は酔語(すいご)が加わり楽しいものとなった。
本紙でも諸外国の社会保険、生命保険、損害保険に関する記事が普通に掲載されている。そのうち仏式保険学会が普通に開催される日が来るかもしれない。無論この学会はお寺で開催されるものではない。(朗進)