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インダストリー4.0、遅い歩み

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 ドイツの製造業のデジタル化が遅れている。ドイツ連邦経済気候保護省、工学アカデミーなどは2011年、製造業のデジタル化計画「インダストリー4.0」を公表した。その目的は、アナログが中心の製造業界のビジネスモデルを大きく改革して、ドイツの物づくり大国としての地位を守ることだった。
 例えば、工作機械と部品、半製品が情報を交換するスマート工場や、顧客が使っている製品と本社のITシステムがリアルタイムで情報を交換して製品の状態を監視し、異状が見つかれば修理や更新などのサービスを能動的に提供するスマート・サービス、実車や模型を使わずに耐久性などに関する実験を行えるデジタルツインなどのアイデアが研究されている。
 だが、インダストリー4.0宣言から13年たった今も、製造現場での実装は遅れている。オランダのコンサルティング企業ベアリングポイントとミュンヘン応用科学高等学校は、24年1月に「インダストリー4.0を完璧に実践した企業はドイツにまだ1社もない」という内容の報告書を公表した。
 報告書によると、回答企業の96%が「製造業におけるインダストリー4.0の意味は、今後も増加する」と答え、81%が「今後数年間にインダストリー4.0関連技術に投資する方針だ」と答えた。つまり、インダストリー4.0がドイツのメディアでめったに報じられなくなった今も、製造業界ではデジタル化への関心が高い。
 ただし、この報告書によると、回答企業の中で「インダストリー4.0を完全に実施した」と答えた企業は1社もなかった。回答企業の73%が「人間が行っているアナログ工程を機械によって代替しようとしている」と答えた他、69%が「製造に関するデータの収集、把握に取り組んでいる」と答えた。回答者の58%はクラウドすら導入していなかった。つまり、政府の号砲から13年たった今でも、大半のメーカーはデジタル化のために悪戦苦闘を続けている。
 インダストリー4.0の実現が遅れている最大の理由は、リソース不足だ。「インダストリー4.0の実現を阻んでいるのは何ですか」という問いに対して、回答者の63%が「資金と時間の不足」と答えた。55%は「テーマが複雑過ぎる」と答えた他、39%は「必要な技能を持った人材の不足」を挙げた。ITと機械製造の知識を併せ持つ人材が足りないことが足枷となっている。論壇からは、「この技術が普及するのは50年ごろになる」という悲観的な見方も出ている。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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