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Book Details 3,000万円でつくる「ミニ保険会社」

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3,000万円でつくる「ミニ保険会社」
中川 尚 著
発行日
2011/04/20
判型/ページ数
A5判/199頁
価格
2,200円(税込) 2,000円(税抜)
ISBNコード
9784892930393
本書の内容

2006年施行の改正保険業法で少額短期保険業が誕生して丸5年が経過した。その間、60社余りの企業が参入して、さまざま保険商品を開発・販売しているが、業界の全体像やビジネスモデルなどについて、いまだはっきりとしないという声も聞かれる。そうした中、4月20日に『3,000万円でつくるミニ保険会社』という本が出版された。同業界のビジネスを包括的に分かりやすく説明した同書の著者、中川尚氏に執筆の動機や少額短期保険業界の今後の展望などを聞いた。同氏は、(株)インズ・ビジョン(東京都中央区)の代表者として、生損保、少額短期保険会社、共済などの立ち上げや運営全般の支援を行っている。

 ―執筆のきっかけは。
 中川 今まで少額短期保険業について書かれた本には、根拠法のない共済が規制された経緯や法令の解説書、Q&A集、設立・運営マニュアル、そして商品解説書などがある。少額短期保険業が一定期間を経過した今日において、歴史的経緯を踏まえながら少額短期保険会社がどういうふうにビジネスを進めるのか、マーケットをどのようにとらえるかなど、日本の保険業界におけるビジネスとして全体を俯瞰(ふかん)した本が必要だと考えた。
 ―同書のセールスポイントは。
 中川 保険業界に携わっていない人が読んでも俯瞰的に理解いただけるよう、少額短期保険ビジネスの入門書の体裁をとった。日本の金融行政は契約者保護を目的に、保険業界に対して事業の健全性を殊のほか重んじているため、法令や規則をこと細かく定めている。そうした一つ一つの規定を漏らさず本書に記載しようとすると、膨大なページ数になってしまい、この業界に多少興味があるだけの読者は、すぐに読むのをやめてしまうだろう。本書は、できるだけ分かりやすい内容で、文章も話し言葉のトーンを心掛けた。
 ―執筆に際しての苦労は。
 中川 ビジネス全体を包括的に説明するという課題に向けて、内容をどのくらい割愛するべきかについての匙加減が難しかった。例えば、ソルベンシーマージンに関する説明では、本書を読んだだけでは正確なソルベンシーマージンの数値を計算することはできない。アクチュアリーなどの専門家にとっては物足りない内容かもしれない。しかし、保険業界にあまり詳しくない人が、ソルベンシーマージンとはどういうもので、どういう計算方法で算出するかを理解するには十分な内容だろう。
 ―3000万円という数字の根拠は。
 中川 少額資本のミニ保険会社というアイデアは行政も充分勘案しており、法令の最低資本金は1000万円になっている。しかし、開業前に1000万円を供託するため、キャッシュがなくなって開業時の運営は厳しくなる。そこで、最低のキャッシュラインがどのくらいで少額短期保険会社をスタートできるか調べたところ、現在登録している会社のうち、7社は3000万円以下で事業運営している。検討を進めると、ある程度のマーケットや販売網があれば3000万円で運営できると考えた。
 ―同書では特に、初期に設立した少額短期保険会社について触れている部分があるが。
 中川 登録第1号から3号の少額短期保険会社の設立者は外資系保険会社の出身者だ。売り上げや収益を重視する外資系企業は、大きなマーケットに対して利益が得られる商品を販売する傾向が強い。設立者自身が勤務していた時には、限られた顧客が本当に必要としている保険のアイデアがあっても、マーケットの規模や利益率などで開発・販売することができなかった経験から、そうした顧客ニーズにマッチした商品を自ら自由に提供したいという思いが強くなって、少額短期保険会社の設立に向かっていったのではないか。そうした動機によって始めたビジネスこそが、少額短期保険業の正しい姿だと考えている。
 ―同書のほかの特徴は。
 中川 会社を立ち上げるまでの話だけではなく、運営局面についても自らの考えを述べており、例えば、監督当局や保険計理人には、優良なアドバイザーとしての役割をぜひお願いしたいと記した。また、監督当局の検査についても触れたが、現在のところ少額短期保険会社への検査は、一般の保険会社の検査に準じた厳格さで行われている。バブル経済後に破たんした保険会社9社はすべて無理な利回りの商品設計、無理な資産運用を原因としている。その点で少額短期保険会社の商品を掛け捨てに限定し、資産運用を制限したのは評価できるが、一方、保険の募集や引き受け、支払い、内部管理などについては保険会社並みの監督や検査が必要なのか甚だ疑問だ。あまり厳しく縛りすぎると管理コストが大きくなり、業界の健全な発展を妨げるおそれがある。老後の生活費を年金や満期金として数百万円預けている保険会社と、年間支払保険料数万円の掛け捨て保険のみを扱っている少額短期保険会社とでは、消費者保護の観点から見た監督レベルも変えるべきと考えている。
 ―少額短期保険会社数の推移について。
 中川 登録企業数だけ見れば、改正保険業法が施行されてから2~3年の間に急増した後、伸びが鈍化しているように見えるが、無認可共済だった団体が初期に相次いで移行したのと並行して、異業種からの新規企業が年間4~5社のペースで参入している。今後もこの傾向が続くと見ており、業界はゆっくりした速度かもしれないが、着実に拡大するだろう。
 ―最後に、読者へのメッセージを。
 中川 大震災が起きたばかりの現在は、保険会社が保険金支払いの対応を早めるなど、社会全体で被災地の復興や支援に向かって動いているが、長い目で見れば、今回の震災によって各家庭や企業で将来のリスクに備える意識が高まっていくだろう。そうした中で少額短期保険のビジネスがこれまで以上に活躍してくれればと考えている。本書は、今まで保険業界にかかわりが少なかった人を主な対象に書かれており、そうした人が一人でも多く、本書を手に取って読んでいただき、少額短期保険業に関心を持ってもらえればこの上なく喜ばしい。 (保険毎日新聞2011年4月28日付記事より転載)