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うず

6月の楽しみと育成

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 6月のひそかな楽しみに梅酒の仕込みがある。拙宅の庭には2メートル超の梅の木があり、毎年春のかぐわしい香りの後は収穫が望める。さて、本年は残念ながら、梅花の付きが少なく梅の実も少ない。仕方なしに完熟させて梅酒づくりとしたのだが、仕込みをしながらどうして今年の収穫が少なかったのかを考えていた。
 原因としては、異常気象のせいか?とまず他責で考えた。しかし、前年と比較して冬の寒さがとりわけ厳しかったわけではない。昨夏は酷暑だったから、影響があったのかもしれない。しかし、拙宅の梅の木はこれまで毎年しっかりと実を付けてくれていた。原因はほかにあるはず。そこで自責で思い出したのが、剪定である。昨年は常連の庭師のスケジュールと折り合わず、伸び放題になっていた枝を夏の終わりごろに剪定したのだ。これが原因だったか。梅の花芽は夏に伸びる枝に付くから、本来の花芽の付く枝を切り落としてしまったのだ。
 人財開発を行ってきた自分としては、上手な剪定は育成につながると感じている。樹木の手入れを人の育成に例えるなどけしからんと言われそうだが、実は似ているところもいろいろある。継続した手入れと見守り、成長のための土壌と活躍の場、与える水や栄養と学習や研修など、言い換えてゆけば、相手が樹木でも人でも考え方の根本は同じなのかもしれない。環境をつくり、知識をつけさせ、タイミングを見計らって成長を促す。育とうとしている内なるエネルギーを見極め、ときに開放し、ときに指導する。人財育成そのものだ。それぞれの成長を促すことができれば、樹木が芽吹くように、個性あふれる人財が育ってゆくことだろう。もの言わぬ樹木でさえも、丁寧にタイムリーに剪定することで木の健康も保ちつつ、美しい花実を愛でることができる。人ならばなおさらだ。さて、広口瓶につめた梅酒を眺めながら、今年も梅酒の成熟を待つことにしよう。(こゆ美)

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