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日本のGDPはなぜ独に抜かれたのか(上)

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 昨年10月10日、あるニュースが多くの日本人から注目された。国際通貨基金(IMF)が、「2023年のドイツの名目GDPが、55年ぶりに日本を抜いて世界第3位になる」という見通しを発表したのだ。
 IMFによると、ドイツの23年の名目GDPは4兆4298億ドル(620兆円、1ドル=140円換算、以下同じ)で、米国・中国に次いで第3位。日本は4兆2309億ドル(592兆円)で第4位に転落した。ドイツの名目GDPは日本を4.7%上回った。ドイツの名目GDPは前年比8.4%増え、日本の名目GDPは同0.2%減った。
 1968年には日本の名目GDPが当時の西ドイツを追い抜いて世界第2位になった。日本の名目GDPは2010年に中国に抜かれ世界第3位に転落したが、それから13年後には第4位に下落した。55年ぶりに日本とドイツの順位が入れ替わったのだ。今年2月、日本の内閣府もIMFの予測通り、わが国の名目GDPがドイツに抜かれたことを確認した。
 日本のメディアでは、日本の名目GDPがドイツに抜かれて世界4位になった理由として、「ドイツのインフレと円安が主な原因だ」という論調が目立つ。だが、私の見解では、これだけが逆転劇の理由ではない。インフレと円安も影響したことは間違いないが、短期的かつ副次的な原因にすぎない。真の理由は、21世紀に入って両国間の成長率の差が拡大したことだ。私がそう考える理由をご説明しよう。
 23年にドイツの名目GDPが日本を抜いた最大の原因は、21世紀に入ってからドイツの名目GDPが日本を上回る速度で増えて、両国の名目GDPの差が急激に縮まったからだ。23年にはダメ押しのようにドイツのインフレと円安が順位を逆転させた。そのことは、日独の名目GDPの長期的な推移を比べるとはっきりする。ここに掲げたグラフを見てほしい(別掲グラフを参照)。
 私は経済協力開発機構(OECD)のデータバンクを使って、1970年から2022年までの日独の名目GDPを11年ごとに比べてみた。70年代の日本の成長率は、50年代からの高度経済成長の余韻のために目覚ましかった。日本の名目GDPは70年~80年に201.8%も増えている。大阪万博の開催、日本の先進国首脳会議(サミット)参加など、日本が輝いていた時期である。この11年間の日本の名目GDP成長率は、ドイツの名目GDP成長率(159.4%)を大きく上回った。1980年の日本の名目GDPは1兆5050億ドルと、ドイツ(8148億ドル)の約1.3倍になった。当時日本は「G7唯一のアジアからの参加国」として、経済大国の名をほしいままにしていた。
 (つづく)
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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