うず
「シェア」の可能性
若年層の失業率が高い中国で、老人ホームに住み着く若者が増えているというニュースを目にした。高齢者の見守りや一定時間の奉仕活動を行うことで、家賃が割引または無料になるのだという。
興味を引かれ調べてみたところ、日本でもこれに近い取り組みがあった。若者と高齢者がグループで暮らす「異世代シェアハウス」や、空き部屋がある高齢者の家に若者が同居して共同生活を送る「異世代ホームシェア」というもので、若者が高齢者の生活をサポートすることはあるものの、調理や掃除など身の回りのことは自身で行うのが基本的なスタイルらしい。
若者は経済的負担の軽減に加えて人生の先輩からの学びを得られるなどの恩恵が受けられ、一方で高齢者にとっては、孤独の解消や生活・防犯面での安心の他、若者との交流を通じて新たな刺激を受けられるといったメリットがある。また、社会的に見ても、孤独死の防止や空き家化対策につながるという利点がある。
現状では日本における事例はまだ少なく、今後もさまざまな課題が浮上するものと考えられるが、シェアリングエコノミーの概念が浸透していくにつれ、社会課題の解決に大きく寄与する可能性を秘めたこれらの取り組みも徐々に広がっていくのではないだろうか。
インターネットの普及やIT技術の進展も手伝い、社会はものを「所有」する時代から「共有」する時代へと変化しつつあるが、特に少子高齢化による人口減少が進む日本においては、「共有」を「共助」や「共創」へとつなげていくことは今後ますます重要になるだろう。保険と同じく「助け合い」の精神によって、あらゆる人々が豊かに生きられる社会がつくられることを期待する。(糸)