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物づくり大国ドイツの危機④

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 ドイツ連邦統計局が2024年1月15日に発表した資料は、この国の政界、経済界にショックを与えた。化学工業、自動車製造業、金属加工業、機械製造業の国内での生産額は製造業界全体の国内生産額の55.5%を占めているが、これらの業界の生産額は年々減る傾向にある。例えば、化学工業の生産額は18年から23年までに20%、自動車製造業は14%、金属加工業は13%、機械製造業は10%それぞれ減ったことがわかった。これらの四つの業種の23年11月の生産額はEU平均・米国よりも低くなった。
 連邦統計局の統計の中に、EU加盟国の15年から23年までの製造業界の生産額を比較したグラフがある。このグラフによると、この時期に生産額が最も増えたのはポーランドで、51.9%も増えた。これに対し、ドイツの生産額は15年から23年に3.6%減ってしまった。これはEUで最低の成長率である。この時期のEUの製造業界の生産額の平均増加率は10.9%なのに、ドイツだけが生産額を減らしている。このグラフは、ドイツの物づくり業界のパフォーマンスが近年いかに悪化しているかをはっきり示している。
 23年にはドイツの就業者数は前年比で0.7%増えたが、製造業界の就業者数は0.1%しか伸びなかった。23年のドイツの粗付加価値は前年比で0.1%減ったが、製造業の粗付加価値の減少率は0.4%と大きく上回った。
 連邦統計局は、「製造業の粗付加価値はそれほど減っていないが、生産額の減少傾向は明らかであり、ドイツでの工業衰退の傾向が見える」と結論付けている。物づくり大国ドイツの前途に警戒信号が灯っているというべきだろう。
 輸出額も23年には前年比で3%減った。23年11月のドイツから中国への輸出額(86億ユーロ)は、前年同月(93億ユーロ)に比べて7.8%減った。ドイツにとって中国は世界最大の貿易パートナー。同国の製造業界は、自動車、機械製造、化学業界を中心として、中国に大きく依存している。しかし、中国の不動産不況や若年失業者の増加などが影響して、ドイツの対中輸出にブレーキがかかっているのだ。
 ドイツの信用調査機関クレディート・レフォルムによると、23年にドイツでは1万8100社が倒産した。前年に比べて23.5%多い。連邦労働庁が24年1月に発表した統計によると、景気後退の影響で23年の失業者数は前年比で19万1000人増えて、260万9000人となった。
 ドイツの製造業界が現在の苦境からいつ立ち直れるかについては、まだ見通しが立っていない。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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