ゴミ捨て天国ミュンヘン?
今年5月から2カ月にわたって、日本に滞在した。この国で「大変だなぁ」と感じるのは、家庭ゴミの分別の複雑さである。月曜日は古紙、火曜日は生ゴミ、水曜日は不燃物、木曜日はペットボトルといった具合に、曜日が決められている。不燃物を捨てるには、代金を払って買ったゴミ袋に入れなくてはならない。新聞紙や段ボールはひもで縛らなくてはならない。
生ゴミは、カラスがつつかないように、ポリバケツなどに入れて出さなくてはならない。一度、誰かがポリバケツに入れずに生ゴミを路上に出したと見えて、カラスたちが路上に残飯などをぶちまけて、食事を楽しんでいた。出す古紙の量が多すぎると持って行ってくれないし、ゴミを出す曜日を間違えると貼り紙で怒られる。
これに対し、私が住んでいるドイツ南部のミュンヘンは、ゴミ分別に関するストレスがドイツで最も少ない町の一つだ。マンションのゴミ捨て場には、2種類の大きなコンテナしかない。青いコンテナには古紙を捨てる。それ以外の全てのゴミは、黒いコンテナに捨てることが許されている。つまり、原則として市民はゴミを分別しなくてもよい。毎日、朝から晩まで、24時間捨てられる。
ゴミは回収車で集められた後、ゴミ処理場で清掃局の職員たちが巨大な扇風機や磁石などを使って分別する。家具などの粗大ゴミは、車などで指定された集積場に運べば、無料で処理してくれる。
ミュンヘンは、ドイツでも分別義務が少ない町として有名で、他の大半の地域ではプラスチックやガラス、アルミなどを分けて捨てなくてはならない。
日本ではこんなに細かく分別を行っているのに、リサイクル率がドイツよりも低い。経済協力開発機構(OECD)によると、2022年に家庭ゴミのリサイクル率が世界で最も高かったのはスロベニアで55.3%。ドイツは世界3位で47%だった。日本は19.4%で、世界27位だった。
ちなみに、日本では包装廃棄物がドイツよりもはるかに多い。大福を買ったらプラスチックの箱に入っていた。スーパーマーケットではリンゴが発泡スチロールの保護材で包まれていた。ドイツでは見たことがない。日本でもレジ袋は有料になったが、パンを買うと1個ずつ薄いビニールの袋にくるんでくれることがある。ドイツでは、全てのパンを大きな紙袋に入れるだけだ。
日本でも包装材をもっと減らして、分別を簡単にしてみてはどうだろうか?顧客だけではなく、環境にもおもてなしの心が必要だと思う。
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
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