高齢者免許任意返納に思う
報道などで高齢者の起こした事故が大きく取り上げられ、痛ましい結果から高齢者イコール運転するな、という偏った意見も垣間見る。過去の交通事故データではさまざまな分析もあるなかで、高齢者免許任意返納は、交通事故のリスクを減少させるために重要な施策の一つなのだろう。
しかし、2050年には65歳以下の1人が65歳以上の1人を支える社会を迎えるなか、高齢者も可能な限り自立できる社会を目指すことが優先であって、やみくもな返納推奨はいただけない。過疎地などでの課題はすでに取り上げられているが、特に周囲に高齢者のいない場合は、どのような問題があるのか想像しにくいのではないか。
例を挙げよう。地方在住の80代夫婦2人。農業従事。地方だから住まいの徒歩圏には駅はなく、コミュニティバスもなく不便。年齢相応の身体の変化で長時間の歩行は難しく、車両が必須だ。免許返納してしまったら、それこそ日常生活が回らないのだ。一方的な返納推奨だけではうまくゆかない。どんな対応が必要か。
まず日々の移動支援が必須である。定期バスすらないような場所では、免許返納後の高齢者に対して割引料金を設定するなど、定期的な買い物や病院への通院をサポートすることだ。また、簡単に移動手段を予約し使用できるような仕組みをつくれないのか。いずれにしても、複数の組織や地域が協力し支援を構築することが重要となる。
保険では何ができるだろう。今後も増加する高齢者向けの特約やサービスを開発し、免許返納後の生活、そうして一人暮らしや高齢者自立をサポートすることは難しいのか。移動支援サービスの利用料のカバーやオンラインサポートの提供など、日々の生活サービスで、高齢者が安心して生活できる環境構築には参加することができるのではないか。(こゆ美)