ページトップ

Column コラム

ホーム コラム うず アルムナイ
うず

アルムナイ

SHARE

Twitter

 昨今、企業の雇用に関して「アルムナイ」という不思議な響きを持つ言葉をよく耳にする。「教育機関の卒業生」を意味するラテン語が由来らしいが、現在は会社や団体の退職者を指す言葉として使われる。企業が積極的に退職者との関係を築いて再雇用につなげる施策とともに広がっており、低迷が続く日本経済が成長するための一つの鍵とも言われる労働市場の流動化の動きとも重なる。
 もともと人材の流動性が低いと言われる保険業界でも2022年頃からアルムナイに取り組む企業が出始め、大手生損保で「アルムナイネットワークを発足」といったニュースリリースが発表されるなど、近年急速に普及しつつある。保険会社側の目的は再雇用だけでなく、採用ブランディングや人材開発、ビジネス連携など多岐にわたるという。
 以前の日本企業では新規一括採用・終身雇用が一般的で、それゆえ退職者は終身雇用における一種の裏切者のように捉えられていたように思う。退職者から一度辞めた会社に表立ってコンタクトを取ることはためらわれ、在職時の個人的なつながりでのみ、所属していた会社の近況を知ることができたという人も少なくないのではないか。それが今や、採用時期や採用方法は多様になり、会社の方で退職者同士のネットワークを作り、「ぜひ参加してほしい」と招待するというのだから時代の大きな変化を感じる。
 先月から、世間を賑わせた旧ビッグモーター社による保険金不正請求や大手損保による保険料調整行為などを契機に、損保業界で長く続いていたビジネス慣習の問題点が金融審議会で議論されており、損保業界自体も再発防止や信頼回復に向けて取り組みを進めている。現在は、そうした保険ビジネスの変化のみならず、保険会社の組織そのものも大きく変化するタイミングに来ており、アルムナイの施策はその一つの表れではないだろうか。これらの取り組みの末に、保険ビジネスが、保険会社がどう変わっていくのか注視していきたい。(はのはのは)

SHARE

Twitter
新着コラム