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旧東独で極右政党が大躍進(下)

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 旧東独での州議会選挙で極右政党AfDが躍進した最大の理由は、連立政権を構成する社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)に対する市民の強い不満だ。8月に行われた世論調査によると、テューリンゲン州とザクセン州の回答者の3分の2が「州議会選挙でSPD、緑の党、FDPを懲らしめる」と答えていた。
 キリスト教民主同盟(CDU)のカルステン・リンネマン幹事長は「SPDの得票率はどちらの州でも一桁にとどまった。これが国政を担う大政党と言えるのか」と批判した。AfDのアリス・ヴァイデル共同党首は「9月22日にブランデンブルク州で行われる州議会選挙でもこれらの3党が得票率を大幅に減らした場合、来年9月の連邦議会選挙を前倒しして、国民の信を問うべきだ」と述べている。
 実際、ショルツ政権の政治運営には市民から批判が強まっていた。昨年11月にはショルツ政権の過去の予算措置について連邦憲法裁判所から違憲判決を受けたため、予算に600億ユーロ(9兆6000億円、1ユーロ=160円換算)もの穴が開いた。このためショルツ政権は歳出を削減するために、電気自動車の購入補助金や農民のディーゼル燃料への優遇措置を突然廃止し、消費者、農民たちの怒りを買った。
 緑の党に対しては、「自分たちのエコロジー思想に基づくさまざまな政策を十分に説明せずにわれわれに押し付ける」という批判が強い。典型的な例が暖房改革である。ハーベック大臣は法律を改正することによって、今年1月1日以降新設される暖房設備については、エネルギー源の少なくとも65%が再生可能エネルギーである暖房設備以外は禁止しようとした。この政策については、野党、学界、消費者団体などから「低所得者層に配慮しない政策だ」という批判が強まり、ハーベック大臣は法案を大幅に緩和し、適用を4年間延期せざるを得なかった。
 緑の党については、「二酸化炭素の排出量を減らすために、われわれがどのような車に乗るべきか、どのような食事をとるべきかについてまで干渉してくる」という批判が強い。欧州では、緑の党の会派などが推すEU法に基づき、2035年以降は内燃機関を使う新車の販売が原則として禁止される。緑の党の議員の中には、「メタンガスを放出する家畜を減らすために、肉を食べる回数を減らすべきだ」と発言する者もいた。こうした動きは個人主義が強いドイツ人にとって、「自分の生活への介入」と映る。ショルツ政権は、当分の間苦戦を強いられそうだ。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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