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カタルーニャ建築の美

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 芸術の都バルセロナは、町を歩くだけでも楽しい。天才建築家アントニ・ガウディの建物があちこちにある。グラシア大通りに面したカサ・バトリョは、1877年に建設された。ガウディが裕福な繊維商のために設計した。青や緑の点を散らした壁面が美しい。建物全体が生き物であるかのような、曲線の多いデザインが斬新である。一説によると、この建物は竜を退治するキリスト教の聖人を表わしている。波打つ屋根は竜の背中、2階に大きく開かれた窓は竜の口、屋根の十字架は聖人の剣、仮面のように見えるベランダは髑髏(どくろ)を表現している。
 この建物の横にはゴシック様式の邸宅なども数軒立っており、建物のファサード(前面の壁)の美しさを競うコンクールが行われているかのようだ。
 バトリョ邸から歩いて数分の場所に、曲線を多用した白い建物がある。1906年から1910年に建設されたカサ・ミラだ。ガウディがミラという実業家のために設計した。屋上には仮面をかぶったように見えるユーモラスな彫像が屹立して、バルセロナの町を見下ろしている。建物全体が、石ではなくぶよぶよした有機体であるかのような錯覚を生む。計算され尽くした「遊び」の感覚だ。
 ガウディの最大の野心作は、サグラダファミリア聖堂である。伝統的な教会建築とは一線を画すガウディのモダニズムに満ちている。18本の尖塔の高さは90メートルから112メートル。1882年に建設が始まったが、まだ完成していない。ガウディの逝去から100年に当たる2026年に完成させることは難しく、30年代まで食い込むとみられている。
 バルセロナで、世界で最も美しいコンサートホールに入った。旧市街のカタルーニャ音楽堂である。1905年から1908年に建設された。リュイス・ドメネク・イ・ムンタネーという建築家が設計した。内部は「壮麗」の一言に尽きる。天井には、太陽を象徴する巨大なシャンデリアがある。昼間はガラスの天井を通して、青、赤、オレンジ色の光が降り注ぐ。その周りを、陶器で作られた無数のバラの花が取り囲んでいる。側壁の黄色いアーチの装飾と、青色のステンドグラスの対比が美しい。この建物は元々、地元のコーラス団のために、繊維商や音楽愛好者たちが資金を出し合って建設された。このため、音響効果も良い。現在もクラシック音楽や現代音楽のコンサートに使われている。1997年にユネスコの世界文化遺産に指定された。バルセロナは、欧州で最も美しい町の一つだ。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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