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仕事との格闘

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 今年、ある会社の社長が退任した。その方の言葉でとりわけ記憶に残っているのが「仕事との格闘」というフレーズだ。風貌や話しぶりから非常に温厚な方という印象を持っていたので、格闘という言葉のインパクトとギャップがあった。おそらくご自身で考えた表現なのだろう。
 その方はこのフレーズを主に新入社員に対して使い、これからの会社人生の中で前向きに仕事に取り組むことを通じて成長してほしいという思いを込めて、「仕事との格闘なくして成長は得られない」と激励していた。これを自己流に解釈すると、仕事の大小を問わず自分に課された役割において認識した課題を前に、ときに時間を惜しまず突き詰めて考え、何とか改善策を見つけ出して実現に向けて努力を重ねることが、ことの成否にかかわらず自己の成長につながる、といったところだろうか。
 近年、企業社会ではデジタル化の進展やコロナ禍など外部環境の変化と相まって働き方改革が浸透してきている。停滞が続く日本経済の回復の鍵の一つに生産性の向上が挙げられるが、その実現には働き方改革が不可欠とされる。労働の負担を軽減させ、働きがいを高める方向に社会が進むことは非常に喜ばしい。
 一方で、生産性の向上には働き方改革だけでなく、イノベーションなどを通じた成長が重要になる。働き方改革は会社と社員双方のための制度だが、「勤務時間が短くなって前より楽になった」だけでは、会社も社員もいずれ残念な行く末になってしまうだろう。勤務時間の長短を問わず社員に期待されるのは成長につながるパフォーマンスであり、そのパフォーマンスを生み出すには「仕事との格闘」が必要ではないだろうか。
 社長を退任したその方の会社も、近年柔軟な働き方を推進している。経営トップからインパクトのあるメッセージを受け取ってきた若手社員たちが、これから各々の仕事でそのメッセージをどう体現して、パフォーマンスにつなげていくのか、期待して見ていきたい。(はのは)

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