うず
村瀬先輩逝く
この1月末、本欄でも話題にさせていただいた村瀬泰雄先輩が逝去された。ここ1、2年は闘病生活をされていたものの、2月には93歳を迎えられる直前のことだった。
保険業界の大先輩で、ご縁を得ては多くの教えを受けた。ご葬儀には元勤務先、業界人、出身学校、保険学会等の関係者が多数参列されていたが、コラム子も万感の思いを持って参列した一人だった。
ご祖父は明治黎明期の保険学者にして実務家「帝国海上保険」の副社長、お父上は「大正海上火災」の社長、ご自身も「東京海上火災」の専務取締役を務められ、三代にわたって損害保険業界で活躍された名門のご出身であるが、本当に親しみやすい方だった。
「君ね、ニホンザルの群れには本当は『ボス猿』はいないのですよ。いるのは、ときには仲間の諍い(いさかい)まで仲裁する『リーダー猿』なのです。群れに君臨する『ボス猿』のイメージは人間社会の誤解ですよ」「人と組織経営の根幹は『理、情、道』で、基本はやはり人間です」など数々の教えを懐かしく思い出していた。
また、「密かに明治時代三大コンプラ違反話と称している」と以前紹介したことがある「村瀬春雄が帝国海上の副社長をしているとき、顧客から懇願を受けて困った部下からの約款上払えない案件の相談に『可哀想じゃないの、払ってお上げなさいよ』と言ったといわれている」も先輩から直接伺った逸話だった。
出身の旧制成城高校への母校愛にも大きなものがあり、同窓会組織の理事長も務められていた。そして何よりも「保険」を愛した先輩だった。(朗進)