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ドイツ・緑の党の功績

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 現在ドイツの連立政権には、緑の党が参加している。日本の緑の党は国会に議席を持っていないが、1980年に創設されたドイツの緑の党は重要な中堅政党だ。
 22年春の時点で緑の党の支持率は20%を超えていた。だが今では約半分の12%に下がった。その理由は、緑の党が力を入れてきた二酸化炭素(CO2)削減政策について、多くの市民が不満を抱いているからだ。
 たとえば緑の党のハーベック経済気候保護大臣は、法律を改正して、24年1月1日以降、暖房設備を新設する際には、エネルギー源の少なくとも65%が再生可能エネルギーである暖房設備以外、禁止しようとした。だが市民や消費者保護団体が激しく反対したため、政府は適用を28年に延期せざるを得なかった。
 ただし緑の党には功績もある。それは、ウクライナに対する軍事支援を強く要求したことだ。社会民主党のショルツ首相は、平和主義者である。22年にロシアがウクライナに侵攻した直後、ショルツ政権はヘルメット5000個をウクライナに送ると発表した。当時米国や英国は、ウクライナに対戦車ロケット砲などを送っていた。ドイツは世界の笑いものになった。
 ショルツ氏は「私の最大の任務は、ドイツが戦争に巻き込まれるのを防ぐことだ」と主張し、戦車などのウクライナへの供与に当初反対した。緑の党は戦車供与を強く要求し、首相に圧力をかけた。ハト派の首相は、米国が戦車をウクライナに供与するのを見て、しぶしぶウクライナへの戦車供与を承認した。
 米国のバイデン政権(当時)は24年11月、ウクライナ政府に対し、米国製長距離ミサイルでロシア領内の軍事施設を攻撃することを承認した。英仏は、ロシアを攻撃できる巡航ミサイルをウクライナに供与している。だがショルツ首相は、ドイツの巡航ミサイル・タウルス供与を拒否している。ロシアから交戦国と見られることを恐れているのだ。
 だがウクライナが防衛しているのは、自国だけではない。ヨーロッパの他の国々にロシアの侵略の手が及ぶことを防ぐ堤防にもなっている。
 緑の党は、タウルスのウクライナ供与を求めている。緑の党は脱原発、反核・反戦運動を母体とする。元々ハト派だった。だが絶対的平和主義から脱却して、「民主主義と平和を守るには、侵略者と武力で戦わなくてはならない」という路線に切り替えた。優柔不断の首相に対して、ウクライナへの軍事支援の重要さを強調したことは、緑の党の「功績」の一つである。
 (文と絵・熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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