保守政党が極右政党と「協力」(上)
1月29日、ドイツ連邦議会で歴史的な事態が起きた。保守中道政党が、極右政党と初めて間接的に協力したのだ。キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)のフリードリヒ・メルツ党首は、極右政党・ドイツのための選択肢(AfD)の賛成票を得て、難民規制決議案を連邦議会で可決させた。
決議案は議会の一種の意思表示であり、法的拘束力はない。だが、中道保守政党と極右政党が事実上「協力」したことは特筆するべき出来事だ。
メルツ氏は、「事実上の難民受け入れ停止」を目指している。これはAfDの長年の主張と同じだ。アンゲラ・メルケル前首相が2015年に採用した人道主義に基づく寛容な難民政策を撤回し、亡命申請者の入国数を大幅に減らすことを狙っている。CDU・CSUの決議案には、将来次の措置を行うことが明記されていた。
①入国許可を持たない外国人のドイツへの入国を禁止し、国境で追い返す。その外国人が「亡命を希望する」と発言しても入国を許さない。
②滞在資格がない外国人を兵営などに収容し、国外追放を加速する。
③国境では常に入国検査を行う。
④連邦政府は滞在資格がない外国人の国外追放について、州政府を支援する。連邦警察は、出国を義務付けられた外国人について逮捕状を請求できるようにする。
⑤外国人の犯罪者やドイツの治安を脅かすとみられる外国人は、出国するまで、収容施設に無期限に拘束する。
連邦議会で行われた票決では、CDU・CSUがAfD、自由民主党(FDP)、ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)の支援を受けて、過半数を得た。メルツ氏は「私は当初AfDの助けを借りずに決議案を通すつもりだった。このため、社会民主党(SPD)と緑の党に支持を求めたが、彼らは『このような難民規制措置は憲法やEU法に違反する』として協力を拒んだ。したがって私は、他のどの党が賛成しても構わないと考えることにした」と説明している。実はメルツ氏は昨年11月に、「AfDとは絶対に協力や連立を行わない」と公言していた。彼はわずか約2カ月後に公約を破った。
票決の結果が発表されるとAfDは、「今日は歴史的な日だ。CDU・CSUはわれわれの路線に近づいた。これまでタブーと見られてきた政策協力が実現した」とメルツ氏の決定を歓迎した。AfDの幹部らは、自分たちの長年の主張が、政界のメインストリームによって受け入れられたと考えている。AfDは「CDU・CSUが防火壁を取り払った」と主張。AfDにとっては、大きな前進である。
(つづく)
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92