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うず

【うず】センテナリアンへの道

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 センテナリアンとは100歳以上の長寿者を指す言葉であり、日本では「百寿者」とも呼ばれる。ここで、筆者の84歳になる父親を例に「センテナリアンへの道」を考えたいと思う。
 金融機関の会社員だった父は、過労で目から出血しても、骨折しても、一日も休まず馬車馬のように働いた。当時は日曜日しか休みがないため、私は泥のように眠る父の傍らで、男女逆転版の「眠りの森の美女」を演じたり、お絵描きをしたりして、ひたすら父の目が覚めるのを待っていたが、いつの間にか、夜のとばりが下りていたことも珍しくなかった。バブルも平成不況も、第二の職場も孫育ても通り過ぎた父は、ようやく、「カラオケ」「麻雀」「ボウリング」に励んでいる。この三つは父の世代が昔取ったきねづからしく、「健康教室」として人気が高いとは聞いていたが、麻雀やボウリングに90代の人たちが励んでいる姿は想像がつかなかった。父は「健康教室」では年若で、センテナリアンにはまだ道のりが長い。
 さて、いざという時の保険はどうだったかと調べてみたら、運よく、平成初期にA社の終身補償の介護費用保険に加入していた。ところが、画期的な商品と注目されたものの、売り止めになった上、35年もたっているので、開発者はもとより当時の社員もほぼおらず、A社に問い合わせても文字通りたらい回しにあった。結局、これまた生き字引のような老齢の代理店さんが連絡をくれ、古いパンフレットも送ってくれた。中身は今では使わなくなった福祉用語で書かれており、当時の男性平均寿命75歳を鑑みた内容で、現在のような長寿社会は想像もつかなかったのだろうと見て取れたが、何よりこの保険を今まで使わないで健康でこられたことが一番の幸運だったのだと、カラオケ大会に向けて練習に余念がない父を横目で見ながら思った。(みれい)

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