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【新ヨーロッパ通信】移民をめぐる議論の混乱(中)
ドイツ政府は、合法的な移民、特に高い学歴や技能を持つ外国人の受け入れ数を増やすために、専門職業人移民法を2023年8月に改正した。
この中で最も重要なのが、24年6月から、カナダの制度を見本にして、ポイント制度「チャンスカード」を導入したことだ。
これまで、EU域外の国の外国人にとっては、企業からの招聘がなければ、ドイツでの滞在許可や労働許可を得ることは困難だった。
ドイツ政府はこの問題を解決するために、外国人がチャンスカードを取得すればドイツに1年間まで滞在して、仕事を探せるようにした。チャンスカードの判定基準は、学歴、職業に関する資格や技能の有無、外国での就労年数、ドイツ語と英語の能力などだ。
また、高学歴を持つ外国人に対して支給する滞在・労働許可ブルーカードについても、23年11月から条件が緩和された。例えば、20年には、EU域内で最低5万5200ユーロ(938万円、1ユーロ=170円換算、以下同じ)の年収を稼げることを証明できないとブルーカードを支給されなかった。23年11月以降は、この最低年収額が約18%引き下げられ、4万5300ユーロ(770万円)になった。
さらにドイツ政府は、外国人が長期間ドイツに住みたいと思うように、24年2月に国籍法を改正した。これまでEU域外からの外国人は、ドイツの滞在許可を取得してから8年たたないと、ドイツ国籍を取得できなかった。この法改正により、この期間は5年間に短縮された。連邦統計局によると、24年には29万1955人の外国人がドイツに帰化した。その数は前年比で46%増えた。
外国人の子どものドイツ国籍取得も容易になった。ドイツに住む外国人の夫婦のうち、夫か妻が5年間ドイツに滞在し、無期限の滞在許可を持っている場合、子どもは自動的にドイツの国籍を取得できる。
ドイツ政府は長年の伝統と訣別し、今回初めて二重国籍を認めた。これまでドイツ政府は日本と同じく、原則としてドイツとEU域外の外国の国籍を同時に持つことを認めなかった。ドイツの国籍を取るには、出身国の国籍を捨てなくてはならなかった。
だが、今回の法改正により、EU域外からの外国人がドイツ国籍を取っても、出身国の国籍を放棄する必要はなくなった。優秀な人材を長期滞在させるためだ。ドイツ政府は長年、二重国籍について消極的だった。その国が方針をがらりと変えたのは、「移民を増やさないと国がもたない」という危機感の表れだ。
(つづく)
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
筆者Facebookアカウント https://www.facebook.com/toru.kumagai.92