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新ヨーロッパ通信

【新ヨーロッパ通信】EU・米国「15%関税合意」に批判の声(上)

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税をめぐる交渉で合意に達した」と発表した。この合意によると、EU加盟国が米国に輸出する大半の製品に、米国は15%の関税を課す。一方、米国がEUに輸出する製品への関税はゼロとなる。航空機部品やジェネリック医薬品(後発薬)への関税は双方ともゼロだが、EUが米国に輸出する鉄鋼とアルミニウムには50%の関税が課される。
 米国は当初、EUからの輸入品に30%の関税をかけると発表していたが、これを15%に減らした。ただし、そのための条件として、EUが米国から天然ガス、原油、核燃料を7000億ドル(104兆円、1ドル=148円換算、以下同じ)輸入することと、EUが米国に6000億ドル(89兆円)投資したり、同国の兵器を買ったりすることを約束させた。
 ドイツの産業界からは、「15%でも高すぎる」という批判が聞こえる。この合意を手放しで歓迎する人は少なく、むしろ批判する人の方が多い。米国がEU加盟国からの大半の製品に課す15%という関税率は、過去約100年間で最も高い。欧州の主力輸出品の一つである乗用車については、米国へ輸出する時の関税率がこれまでの2.5%から6倍の15%になった。逆にEUが過去に輸入する乗用車に課していた10%の関税は、米国車についてはゼロになった。合意の不平等性は、覆うべくもない。
 ドイツ自動車工業会(VDA)のミュラー会長は、「関税紛争のエスカレーションが回避されたことは良いことだ。しかし、乗用車と自動車部品への15%の関税は、ドイツの自動車業界に毎年数10億ユーロ(数千億円)の追加費用を生じさせる。内燃機関の車からEVへの転換を進めている自動車業界にとって、さらに大きな負担が加わることを意味する」と述べた。
 ドイツ産業連盟(BDI)のニーダーマルク理事は、「EUが米国との間で15%の関税率で合意したことは、両国の産業界にとって破滅的なシグナルだ。輸出志向が強いドイツの産業界にとって、15%の関税は甚大な悪影響を与える」と悲観的なコメントを発表した。
 ドイツ商工会議所(DIHK)のメルニコフ専務理事も、「15%という関税率は、トランプ氏の就任前に比べると大幅な上昇であり、特に自動車業界への負担は大きい。この合意は、米欧の企業にとって負担を大幅に増やす」と批判した。
 日本のメディアや産業界では、15%関税に関する合意を称賛する声が多かったが、ドイツでは対照的に批判や不満の声の方が強いのは、興味深い。
 (つづく)
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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