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新ヨーロッパ通信

【新ヨーロッパ通信】EUが自動車リサイクルを強化

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 欧州連合(EU)は、廃棄物を減らし貴重な原材料の自給率を高めるために、近く法律を改正して、自動車のリサイクルを強化する。欧州委員会が7月13日に公表した廃車規則案によると、自動車メーカーは車の部品のリサイクルや再利用をしやすいように、車を設計することを義務付けられる。
 重要なのは、再生プラスチックの最低比率だ。EUは規則発効後6年以内に、新車のプラスチックの中の再生プラスチックの比率を最低20%、規則発効後10年以内にこの比率を最低25%にすることを義務付ける。
 ただし、再生プラスチックの供給不足や価格高騰が起きた場合には、欧州委員会は一定の期間にわたり例外を設ける権限を持つ。また、欧州委員会は、実現可能性に関する調査を行った上で、将来鉄とアルミニウムおよびその合金、重要原材料についても、最低比率の導入を検討できる。
 自動車メーカーにとっては費用の増加は避けられない。例えば、EUはメーカーの責任を強化し、廃車の回収・処理費用、廃車の集積所から処理施設への輸送費用も負担させる。メーカーは、生産者がわからない、あるいは倒産・廃業して存在しなくなったメーカーの廃車の回収・処理費用も、マーケットシェアに応じて負担することを義務付けられる。
 EUが自動車リサイクルを強化する理由の一つは、自動車産業が欧州で最も資源を多く消費する業種だからだ。例えば、EUの鉄の年間消費量の19%、プラスチックの10%が自動車産業に消費される。EUのゴム製品の年間生産量の67%、アルミニウムの42%が自動車産業に消費されている。このためEUは、自動車業界を循環型経済(CE)に移行させようとしているのだ。
 もう一つの狙いは、廃車の不正輸出の根絶だ。2019年にはEU域内で1043万台の車の登録が抹消された。そのうち58.1%(606万台)がEU域内で解体、処理された。しかし、32.6%にあたる340万台の所在がわからなくなっている。EUでは廃車の域外輸出は禁止されているが、欧州委員会は340万台の大半が、アフリカや中東、ロシアなどに密輸出されたものとみている。
 このためEUは廃車に関するデータバンクを導入し、税関による域外に移動する車の監視を強化する方針だ。
 さらにEUは、電気自動車に使われている永久磁石などを回収して希土元素を再利用し、中国からの輸入への依存度を減らすことも狙っている。欧州が自給率を高めるのは当分先のことになるが、彼らがCEへ向けた第一歩を記そうとしていることは重要だ。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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