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【新ヨーロッパ通信】太陽光発電助成にブレーキ
ドイツは、再生可能エネルギーの拡大や、二酸化炭素(CO2)排出量の削減に世界で最も力を入れている国の一つだ。2020年に太陽光や風力などからの電力について国が助成し始めて以来、24年には電力消費量の54.9%が、再エネ電力によってカバーされるようになった。
ところが、今年成立したメルツ政権は、再エネ拡大にブレーキをかけようとしている。9月15日、経済エネルギー省(BMWE)のカテリーナ・ライヒェ大臣はベルリンでの記者会見で、「20年以来のドイツのエネルギー転換政策により、消費電力の60%近くが再エネ電力でカバーされるようになった。これは一定の成果だ。しかし、いまエネルギー転換は、成功するか失敗するかの分かれ道にさしかかっている」と指摘。
大臣は、「エネルギー転換を成功させるには、政策の中心を、電力の安定供給と費用効率性の改善に移さなくてはならない」と主張した。
ライヒェ大臣は、エネルギー転換にかかる費用を最小限に抑え、電力システム費用を減らす方針を打ち出した。電力システム費用とは、発電設備、送電系統、配電系統、蓄電池などを建設したり、維持したりするためにかかる費用のことだ。
具体的には、大臣は住宅の屋根に設置される太陽光発電設備(PV)について、固定価格による助成制度を廃止すると発表。さらに、エネルギーに関する全ての助成制度を点検して、その水準を抑制すると語った。
ドイツでは数年前からPVブームが起きている。24年のPV新規設置容量は前年比で10.3%増えて1700万キロワットに達した。24年末のドイツのPVの設備容量は1億キロワットだが、そのうち住宅の屋根に取り付けるPVの容量比率は38%と最も多い。ライヒェ大臣は、この分野のPVは国の補助がなくても独り立ちできると考えている。
また政府は、前政権が設定した太陽光発電設備や風力発電設備の30年までの設備容量目標についても見直す方針だ。
ライヒェ氏は、エネルギー転換をやめると言っているわけではない。彼女は、再エネ促進法に明記された、「電力消費量に再エネ電力が占める比率を30年までに80%に引き上げる」という目標と、「45年までに気候中立を達成する」という二つの目標は維持すると語った。
このため、再エネ業界や緑の党からは、「再エネやCO2削減の目標を維持すると言う一方で、PV助成をやめるのは矛盾している」という批判が出ている。
今後ドイツでは、エネルギー転換の修正をめぐり激しい議論が行われるだろう。
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92
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