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【新ヨーロッパ通信】EUが内燃機関の新車販売禁止を撤回(上)
EUの政府にあたる執行機関・欧州委員会は、昨年12月16日、自動車業界に大きな影響を与える提案を発表した。「2035年以降、内燃機関の新車販売を原則として禁止する」という決定を撤回したのだ。
EUは気候変動に歯止めをかけるために、23年に自動車からの二酸化炭素(CO2)の大幅な削減策を決定した。EUは、35年までに乗用車とバンの新車からのCO2排出量を、21年に比べて100%減らすことを法律で義務付けた。この規定により、自動車メーカーは、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンを使う新車の販売を、35年以降禁止される予定だった。
しかし、今回欧州委員会は、35年の新車のフリートからのCO2排出量の21年比の削減率を100%ではなく、90%にする方針を打ち出した。残りの10%は、EU域内で生産されるグリーン鉄鋼(水素などを使う気候中立的な方法で生産される低炭素鉄鋼)、Eフュエル(合成燃料)、バイオ燃料で相殺する。
欧州委員会は、「この措置により、35年以降、BEV(電池だけを使う電気自動車)、水素自動車だけではなく、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)、レンジ・エクステンダー付きのBEV、内燃機関の車も、引き続き役割を演じることができる」と説明した。レンジ・エクステンダーとは、ガソリンなどを使った小型の内燃機関によって発電機を動かし、BEVのバッテリーを充電して航続距離を延ばす装置のことだ。
つまり、この提案が法制化されれば、メーカーは一定の条件を満たせば、35年以降もCO2を排出する新車を売ることができる。
欧州委員会がCO2規制を緩和した背景には、自動車業界の強い要請があった。ドイツ自動車工業会(VDA)は昨年6月6日に欧州委員会に対して、「35年以降内燃機関の新車販売を禁止するというEUの規定は実行不可能であり、見直すべきだ」と主張。35年のCO2排出量の削減義務を減らすよう求めた。
VDAは、「欧州の自動車業界は、トランプ関税、中国のBEVの流入、EUでの需要の低迷という三重苦を経験している。このままではドイツなどの生産設備の国外への流出が進み、雇用にも悪影響が出る」と警告した。
ドイツの自動車業界は、基本的にはBEVを中心としたモビリティー転換に賛成している。だが、BEVの航続距離への不安、充電器の不足や、高価格などのために、消費者はBEVの購入に慎重だ。ドイツで使われている乗用車約4900万台のうち、BEVの比率は3.6%にとどまっている。
(つづく)
(文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92
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