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新ヨーロッパ通信

【新ヨーロッパ通信】南スペインの不思議な樹木たち

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 欧州の地図を見ると、スペイン南部のバレンシアから地中海を隔てた反対側は、もうアフリカである。夏のバレンシアの暑さは厳しく、気温が35度を超えることも珍しくない。このためバレンシアには、私が住んでいるミュンヘンなど欧州の他の場所では全く見られない、変わった樹木がいくつかある。
 大聖堂や市役所など歴史的建築物が多いバレンシアの旧市街からやや東に、グロリエタ公園という緑地帯がある。13世紀にバレンシアを含むアラゴン王国の支配者だった、ハイメ1世の胸像が建てられている。
 この公園の一角の、最高裁判所に面した場所に、高さ約30メートルの大木がある。巨大な根は地面の上に盛り上がり、まるで巨大なタコの足のようだ。人間が木の前に立つと、小人のように見える。太い枝からは無数の細い根(気根)が垂れ下がっている。気根は地面に到達するとそこに根を張り、枝を支える幹に育っている。
 この大木は、学名をフィカス・ミクロカルパ(Ficus microcarpa)、日本語でガジュマルと呼ばれる、熱帯に多い樹木だ。東南アジアやオセアニアなどに多く見られる。私は香港やタイで見かけた。オーストラリアから持ち込まれたとされるこの木がバレンシアの公園に植えられたのは1852年。つまり樹齢173年である。このガジュマルは、スペイン内戦や、フランコによる独裁、1957年にバレンシアを襲った大洪水も生き延びた。今日ではバレンシアで最も有名な木となっている。
 バレンシアで、かつての川床を利用したリオ公園という緑地帯を歩いている時に、奇妙な木を見つけた。高さは約20メートル。上の方に可憐(かれん)な赤と白の花を咲かせている他、丸い木の実が無数にぶら下がっている。その特徴は、木の幹である。幹の下の方がまるで徳利のようにふくらんでおり、その幹から無数の鋭いとげが出ている。これでは、猿などの動物が木に登って実を取ろうとしても、とげがあるために登れない。この木の学名はセイバ・スペシオーザ(Ceiba speciosa)。日本ではその幹の形から、トックリキワタと呼ばれている。原産地はブラジル、ボリビアなど南米である。
 同じヨーロッパと言っても、アルプス山脈の北側と南側では、植生が全く異なる。個々の地域の自然の違いも、欧州大陸の魅力の一つである。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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