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新ヨーロッパ通信

【新ヨーロッパ通信】経済乱世の時代にささやかな朗報(上)

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 今年に入って、「ルールに基づく世界秩序はどうなってしまったのか」と思わせる出来事が相次いでいる。米軍によるベネズエラ大統領夫妻の拉致と収監、米国のグリーンランド領有権の主張、米軍とイスラエル軍のイラン攻撃、米国の隣国カナダへの圧力…。
 2月20日には米国の連邦最高裁が、「トランプ大統領が議会を通さずに、国際緊急経済権限法に基づいて相互関税を決定したことは違法」とする判決を言い渡した。敗訴したトランプ氏は直ちに別の法律に基づき、150日間にわたり、10%に次いで15%の関税を適用すると発表した。今後多くの企業が関税の還付を要求し、混乱が起きることは必至だ。世界の多数の企業が申請を提出するので、関税の還付を受けるには相当の時間がかかるだろう。
 一人の人物の恣意的な決定により、世界中の企業経営者にとって不可欠な予見可能性、投資安全性が脅かされている。ドイツの多くの企業の業績が、2025年にトランプ関税によって悪影響を受けた。今回の判決は米国の司法の独立を象徴する出来事だが、米国との貿易の不透明性が減るわけではない。
 米国はドイツ企業にとって世界最大の輸出市場である。輸入先としても、米国はドイツにとって世界で3番目に重要な国だ。だが、ドイツ企業の間では、「米国に対する依存度を減らして、貿易相手を分散化する必要があるのではないか」という意見が出始めている。
 IT企業の業界団体が昨年11月に公表したアンケート結果によると、回答企業の51%が「米国のデジタル技術に大きく依存している」と答えた。一方で、企業の60%が「米国を信用していない」と回答した。特にクラウド市場は、アマゾン、マイクロソフト、グーグルによる寡占状態だ。ドイツのメルツ首相も昨年9月の演説で「われわれは米国のソフトウエアに依存し過ぎている」と警戒感を露わにした。
 ドイツ連邦エネルギー水道事業連合会によると、昨年ドイツが輸入したLNGの96%は米国から輸入されている。22年にドイツが購入を決めた最新型戦闘機も米国製だ。
 ドイツ企業の間ではすでに「米国デリスキング」の動きが始まっている。DZ銀行が今年2月に中小企業の経営者を対象に行ったアンケートによると、回答企業のうち「今後5年間にサプライチェーンの中で米国が占める比率を減らす」と答えた企業は19%で、「現在よりも増やす」と答えた企業の比率9%を上回った。だが、今年1月には朗報があった。
 (つづく)
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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