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新ヨーロッパ通信

【新ヨーロッパ通信】エプスタイン文書という「爆弾」

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 2月19日、英国でアンドリュー元王子が警察に逮捕され約10時間拘束された。英国で王室関係者が称号を剥奪されて警察に逮捕されたのは異例だ。元王子は、米国の性的犯罪者ジェフリー・エプスタインに機密資料を渡した疑いを持たれている。
 金融業者エプスタインは、2019年に幼児虐待などの罪で有罪判決を受けたが、公判が始まる前に刑務所で死んでいるのが見つかった。
 欧米ではエプスタイン問題が連日大きく報道されている。米国司法省は今年1月から2月に、300万ページを超える文書、100万通を超えるEメール、約18万枚の写真、約2000本の動画をネット上で公表した。
 文書や写真に現れる人物の中にはアンドリュー氏の他、ドナルド・トランプ夫妻、ビル・クリントン元大統領、マイクロソフトのビル・ゲイツ元社長、ノルウェーのメッテ=マリット王太子妃、映画俳優のウディ・アレン、テスラのイーロン・マスク社長など多数の著名人が含まれている。
 もちろんエプスタインと親交があったというだけで、犯罪になるわけではない。だが、一部の著名人たちは、エプスタインが最初に未成年虐待の罪に問われて有罪判決を受けた08年以降も彼のマンションやカリブ海の島の別荘などを訪れていた。犯罪ではなくても、道徳的な問題は残る。
 エプスタイン疑惑は広がる一方だ。ノルウェーの検察当局は今年2月、同国のトルビョルン・ヤーグラン元首相を汚職の罪で起訴した。エプスタインから旅行に招待されたり、贈答品や融資を受けたりした罪だ。同氏は2月24日に自殺を図り、病院に収容された。英国のピーター・マンデルソン元外務大臣・元駐米大使も、エプスタインに機密情報を渡した疑いで、2月23日に警察に逮捕された。
 経済界でも波紋が広がっている。大手投資銀行の幹部がエプスタインから贈り物を受け取っていたために辞職した他、米国の大手ホテル・チェーンの会長も、エプスタインと交流があったため辞任した。
 文書には日本人の名前も見られるが、米国から遠く離れた日本では、あまり問題視されていないようだ。
 司法省が膨大な量の文書を公表したのは、「事件の捜査は終了しており、文書に名前が載っている人物に対する刑事捜査を行わない」という結論に達しているからだ。文書の中の被害者の証言は生々しいが、エプスタインは死んでいる上に、物証もない。大半の加害者は罰を受けず、被害者は泣き寝入りだ。アンドリュー氏から被害を受けたと主張する女性は自殺した。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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