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新ヨーロッパ通信

【新ヨーロッパ通信】トランプ対応は、人さまざま

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 3月19日の日米首脳会談では、意見の激しい衝突はなかったようだ。トランプ大統領は気分屋である。一番ひどい目にあったのがウクライナのゼレンスキー大統領で、2025年にトランプ氏から、記者団の目の前で「あなたは全くカードを持っていない。感謝の気持ちが足りない」と叱られた上、ホワイトハウスから追い出された。
 トランプ氏はおだてられるのが好きである。このため北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は、昨年NATO首脳会議に先立って、トランプ氏に「あなたは素晴らしい偉業を成し遂げようとしている。他のどの大統領も挙げたことがない大成果だ」というメッセージを携帯電話に送った。しかし、トランプ氏がそのメッセージをネット上で公表したので、メディアから「まるで社長を褒めちぎる社員のようだ」と批判された。
 ルッテ氏と対照的なのが、05年から21年までドイツの首相だったメルケル氏だ。メルケル氏は、トランプ氏が初めて大統領に就任した時の祝辞に、「私は、あなたが人権重視、差別禁止などの普遍的な価値を守る場合のみ、あなたと協力する準備がある」という異例のコメントを書いた。
 これは「トランプ氏が人権重視などの価値を守らない場合には、協力しない」ということを意味する。メルケル氏は、朝貢国の首相であるかのように振る舞うことを拒否した。
 このため、トランプ氏は激怒してメルケル氏を蛇蝎(だかつ)のように嫌い、事あるごとにドイツの経済政策や防衛政策を批判した。通常ホワイトハウスでは、米国の大統領は執務室で訪問者と握手するシーンをカメラマンに撮影させる。だが、メルケル氏が17年に初めて米国でトランプ氏を訪問した時、トランプ氏はメディアの前でメルケル氏と握手することを拒否した。外交儀礼上は、侮辱である。
 トランプ氏に過度に媚びずに良好な関係を維持しているのは、イタリアのメローニ首相、フィンランドのストゥッブ大統領と、ドイツのメルツ首相だ。ストゥッブ氏は、トランプ氏と米国で一緒にゴルフをして親しくなった。トランプ氏は時々ストゥッブ氏の携帯電話に電話をかけ、助言を求めることもある。
 メルツ氏は、時々トランプ氏の政策に理解を示すが、「ホルムズ海峡でタンカーを護衛する任務を支援してほしい」というトランプ氏の要請は、にべもなく拒否した。誰にとっても、トランプ氏との会談は地雷原を歩くようなものだ。これからも各国の首脳たちはトランプ対応に苦労するだろう。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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