うず
自立と相互扶助の精神
孤独・孤立に陥っている人々を支援する団体に携わっている女性が講師を務める講演会に参加した。近年、コロナ禍で高齢者や若者をはじめとする孤独・孤立の問題は政府でも注目され担当大臣が置かれるようにもなっている。
はじめに講師は、ある事件に巻き込まれ拘置所に一時収監された際に、食事など身の回りの世話をしてくれる使役受刑者があまりにも若いことに驚いた経験から話を始めた。なぜこのような若い女性たちが犯罪に手を染めなければならなかったのかについて思いをめぐらし、近づいてくる悪徳組織以外、適格な誰かに相談することさえ困難な状況が原因ではないかとの考えに至った。自身の冤罪が晴れた後、人間の孤独・孤立対策に取り組むさまざまな人々を知り、議論してきたと披露してくれた。
そして、こうした生きづらさや孤独を抱える人、その周りの人々の「私は自立している」「人間は自立せねばならない」という考えへの、よくある誤解についてこう指摘した。
「『自立』とは誰からも援助を受けないことではない。少しずつ社会の多くの人々に助けられて生きることである」つまり、誰からも援助を受けずに生きることは「孤独・孤立」だという。
この言葉を聞いて、これは「保険」の精神にもつながっているのではと感じた。相互扶助の精神、多くの人が保険料を出し合い、不幸にも事故に陥った人の経済的窮地を助ける。まさに保険も同じ仕組みではないか。
また、老コラム子も、「今は誰の世話にもなっていない」などと小鼻をうごめかすような愚を避け、実は多くの方々の援助を受けていることに感謝しなければと痛感した。(朗進)