うず
新「三種の神器」
某大学で生命保険論を講義されているN先生のご厚意で、講義を直接参観する機会を得た。講義室はかなりの大教室で、講義の人気が読み取れた。
数十年ぶりの教室での聴講は多くの刺激を受けたが、一番驚いたのは学生たちの教室での行動だった。昔の学生は指定された教科書とノートが必携で、先生の講義内容をノートに取っていた。コラム子も同じようにペンを手にしていたが、現代の学生はそんなことをしている者は一人もいない。
それは、先生から事前に学内ネットを通じて板書代わりの講義の要点が配布されているからだ。当日教室内でも投影されているのだが、ネット上の「板書」を手元で見るため、全員がノートパソコンやタブレットを持ち込んでいる。ノートを取るのもパソコンのキーボードをたたいて取っている。理解度を確認するために実施される小テストは学内ネットを通して行われ、講義後の熱心な学生の質問もメールでされることもあるという。
中には、別のタブレットに講義要点を映し、ノートパソコンでノートを取り、講義中に先生が紹介した参考文献や資料をスマートフォンで直ちに検索するという、三つのデバイスを「三種の神器」よろしく駆使している学生も散見された。
講義をさぼった学生たちの間で飛び交っていた真面目な学生の「紙のノート」はもはや存在しないのだ。ただ、昔は「内職」と称して講義中に別のことをしたり、バイト疲れか居眠りをする不心得者がいたが、その代わりにパソコンで野球の試合中継を見ていた者や、パソコンの画面を見るふりをして目をつぶっている者がいたのには、過去の自分の新しい形を見る思いだった。(朗進)