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独政府が国家安全保障戦略を発表(上)

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 ドイツ政府は6月14日に初めて国家安全保障戦略を公表し、ロシアの軍事的脅威だけでなく、気候変動やサイバー攻撃などへの対応も強化する方針を打ち出した。
 ショルツ政権は戦略文書の中で、昨年ウクライナに侵攻したロシアを「欧州にとっての最大の脅威」と位置付け、北大西洋条約機構(NATO)との協力関係をより強固にするという姿勢を強調した。ショルツ政権はロシアのウクライナ侵攻開始後、連邦軍の装備の近代化などのために昨年1000億ユーロ(15兆円、1ユーロ=150円換算、以下同じ)の特別予算を計上した。2021年の防衛予算よりも98.8%多い額だ。
 NATOは加盟国に対し、国内総生産(GDP)の少なくとも2%を防衛予算に回すよう求めている。ドイツの戦略文書は、「われわれは連邦軍を強化する。1000億ユーロの特別予算も使って、24年に防衛予算のGDPに対する比率を2%に引き上げ、NATOの目標を達成する」と明記した。同国は老朽化した主力戦闘機トルネードを更新するために、83億ユーロ(1兆2450億円)を投じて米国のF35A型戦闘機を35機購入した他、ロシアの弾道ミサイルを迎撃するためにイスラエルの迎撃ミサイル・アロー3を調達する。調達価格は40億ユーロ(6000億円)と推定されている。
 ただし、ドイツ政府は、「国や市民の安全は、軍備強化だけでは守れない」という立場を強調する。例えば、電力や天然ガス、地域暖房、飲料水、食料の供給、工業生産に必要な原材料の供給網、ITインフラ、通信網など、生活や経済活動を機能させるために不可欠な要素を守ることの重要性も指摘した。
 また、戦略文書は、気候変動を「人類が直面する最も深刻な脅威」と呼び、二酸化炭素の削減と、気候変動の悪影響を緩和するための努力に6ページを割いた。その理由の一つは、ドイツ政府が、「気候変動がアフリカや中東で干ばつを悪化させ、食料や水不足のために多くの難民が欧州に移住しようとする可能性が強い」と考えているからだ。水や食料の不足は、内戦や領土紛争を激化させて、戦火を避けようとする難民の数を増やすかもしれない。15年にメルケル前首相がシリア難民約100万人を受け入れたところ、国民の不満が強まり、17年にAfDという右翼政党が連邦議会入りしてしまった。つまり、欧州では難民問題が、国内政治に悪影響を与える危険がある。今年は昨年に比べて北アフリカから欧州を目指す難民が増えている。
 (つづく)
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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