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うず

忘れちゃだめだ

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 学徒出陣し辛くも戦地から帰還した父に、終戦記念日前後に靖国神社に連れていかれたことを沸々(ふつふつ)と思い出した。井上ひさし作の「闇に咲く花」を8月15日に観劇してきたからである。バブル景気の前夜ともいえる1987年の初演から大好評のこの戯曲は、11年ぶりの7回目の公演であるが、ロシアのウクライナへの侵攻から1年半近くという時代背景もあり、この8月での再演、そして終戦記念日での観劇ということで、なおさらにわが国が侵略戦争の当事者であったことを、そして戦争の悲惨さを、まずは忘れてはならないと思い直したところだ。
 観劇後は、「忘れちゃだめだ、忘れたふりはなおいけない」という井上ひさしの強いメッセージが、頭と心の中で何度も響いている。それは、日本人だけではないのかもしれないだろうが、ことのほか敗戦で180度スタンスを変えられた日本人への警鐘に聞こえるのは私だけではないだろう。戦後、幸運にも高度成長を遂げてきたわれわれは、自分たちの過去をすぐに忘れ、あたかも自分たちだけでいつも新しい道を切り開いてきたかのようにふるまっているのではないだろうか。
 かつて日本機械保険連盟がカルテルで解散させられたことを知らない世代が、知恵を振り絞って提案するという本来の企業営業の姿を忘れた結果が、共同保険カルテルで問題となっている。反省した歴史をキチンと後輩に教える時間も無いとか言われている。後輩が教えてほしいのは最短距離で結果を出す手法だけのようでもある。それでは、同じ過ちと悲劇が待っている。「忘れちゃだめだ、忘れたふりはなおいけない」(白泡)

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