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チョコレートドーナツ

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 渋谷のPARCO劇場の「チョコレートドーナツ」を観てきた。脚本・演出は宮本亜門、そして主役が何かと話題の東山紀之だ。1979年のカリフォルニアを舞台とした同性カップル(一人はショーパブのダンサー、もう一人は検察官)、そして2人が里親になろうとしたダウン症のある少年の物語である。東山のジャニーズ事務所に関わる立ち位置との関係もあり、本当に幕が開くのかと思ったほど、ある意味タイムリーな公演となって、劇場は満員である。
 もちろん、その時代のゲイに対する激しい差別と偏見への問い掛けがメインであるが、その問い掛けが今日的にもまだまだ過去の争点、事件とは思えないのが不思議でもある。ジャニーズ事務所の会見での苦し気な発言と重ね合わせてセリフを聞いていると、セリフの方が素直に耳に入ってくるのでないだろうか。
 このストーリーのもう一つの差別と偏見の対象は、「ダウン症のある少年」である。チョコレートドーナツが大好きな少年役に、実際にダウン症のある少年がトリプルキャストで挑んでいる。そして宮本亜門がダウン症のある子どもたちについて、大いに勉強し、その差別や偏見の解消に力を注ぎ、かつ彼らの可能性をも広げた演出にもなっている。この「ダウン症のある少年」という表現一つをとってもそれは、単に「ダウン症の少年」というのとは大きく違うことに気が付いてもらえたらうれしいだろう。
 どうも東山の最後の舞台ではとか、性の多様性の方だけに関心が高くなっているようだが、もう一つのダウン症のある人たちとのインクルージョンについて、保険業界にもしっかりと問い掛けられている気がしている。(白泡)

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