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新ヨーロッパ通信

どうなった?ドイツ鉄道

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 ドイツ鉄道は、かつて時間の正確さで知られた。しかし、今や遅れが常態化し、利用者の間で不満が高まっている。
 先日、私のドイツ人の友人が列車でミュンヘンからバイエルン州南部のフュッセンに行こうとした。しかし、発車時刻になっても列車が動かない。やがて車内放送があった。「いま列車の運転士を探しています。もう少しお待ち下さい」。
 しばらくすると、また車内放送。「運転士が見つかりませんので、この列車はキャンセルになりました。皆さん降りて下さい。次のフュッセン行きの列車は、2時間後に発車します」。
 私の友人は、「時間を守ったり、約束したことを必ず実行したりするというのが、ドイツの常識であり美徳だった。しかし、この美徳は失われつつある。この国は下り坂だ」と私に言った。
 私も最近は、列車に乗る前に「定刻に着くだろうか」と不安になる。重要なアポイントメントがある時には、約束の3時間前には着くようにしておいた方がよい。
 先日、講演を行うためにミュンヘンからデュッセルドルフに行った。列車は2時間遅れた。車内放送の「この列車は遅れて到着します」という言葉は、耳にタコができた。
 帰りの列車は10分の遅れで済んだが、珍事があった。列車がマンハイム駅に近づくと、車内放送があった。「チューリッヒ行きの列車は、到着ホームの向かいのホームから発車します。乗り継ぎできる予定です」。
 だが、列車がマンハイム駅のプラットホームに入ると、車窓から、向かいのホームの列車が走り出したのが見えた。また車内放送があった。「お客さま、悪い知らせです。チューリッヒ行きの列車は発車してしまいました」。乗客たちから笑い声が上がった。
 ミュンヘン・フィルハーモニー交響楽団はケルンからベルリンへ向かう予定だったが、列車が4時間半遅れたため、団員たちは開演時間から20分遅れてコンサートホールに到着した。予定されていたラジオでの中継は中止された。もちろん、ドイツ鉄道からは何の賠償も受けられない。
 ドイツの日刊紙フランクフルター・アルゲマイネによると、この国では列車が定刻よりも6分以上遅れて到着した場合を遅延と見なす。9月15日の時点では、遅延率は41%。つまり、列車を2回利用すると、ほぼ1回は遅れる。原因は線路やポイントなどの老朽化や、人手不足だ。
 ドイツへ出張や観光で行かれて列車を使われる際には、余裕を持った旅程を立てることをお勧めします。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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