ページトップ

Column コラム

ホーム コラム 新ヨーロッパ通信 24年はドイツで右翼台頭の年?
新ヨーロッパ通信

24年はドイツで右翼台頭の年?

SHARE

Twitter

 ドイツで今年注目されるのが、旧東ドイツで行われる州議会選挙だ。9月1日にザクセン州とテューリンゲン州、9月22日にブランデンブルク州で投票が行われる。不気味なのは、旧東ドイツの大半の州で右翼政党・ドイツのための選択肢(AfD)への支持率がトップであることだ。世論調査によると、これらの州では有権者のほぼ3分の1がAfDを支持している。AfDは地方自治体選挙で次々に外堀を埋めている。昨年7月にはテューリンゲン州のゾンネベルク郡でAfD党員が全国で初めて郡長になった他、12月にはザクセン州ピルナで初のAfD市長が誕生した。
 社会民主党(SPD)や緑の党に対する支持率が下がる中、AfDに対する支持は根強く、この党が9月の州議会選挙で勝つ可能性がある。
 AfDはイスラム教徒など難民に対する排外的姿勢が強く、ネオナチまがいの発言をする幹部もいる。テューリンゲン州のAfD支部長は、演説の際にナチスの突撃隊(SA)のスローガンを使ったために、検察庁から国民扇動罪で起訴されている。ザクセン州、テューリンゲン州、ザクセン・アンハルト州の捜査機関・憲法擁護庁は、これらの州のAfD支部を極右組織と断定している。AfDはドイツをユーロ圏から脱退させることや、再生可能エネルギー拡大の停止、脱石炭の中止を要求している。
 それにもかかわらず、AfDがこれらの州で30%を超える支持率を得ている理由は、市民がショルツ政権の難民政策、経済政策、環境政策について、強い不満を抱いているからだ。「われわれは旧西ドイツ人から、二級市民として見下げられている」という屈折した感情もある。
 だが、これらの州議会選挙でAfDが第一党になった場合、政治の混乱は避けられない。他の全ての政党が、AfDと連立しないという原則を持っているからだ。州政府樹立までに、相当時間がかかる可能性がある。
 昨年12月に世論調査機関INSAが公表した政党支持率調査によると、AfDへの支持率は全国でもキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)に次いで第2位。ドイツは第二次世界大戦後、歴史教育の時間に生徒たちにナチスの犯罪について詳しく教えるなど、「過去との対決」を真剣に続けてきた。そうした国ですら、AfDのような非民主主義的政党の人気が高まるのは、インターネット上で流布されるフェイク・ニュースによるものだろうか。オランダ、イタリアでも右翼政党が伸長したが、右派ポピュリズムの拡大はとどまるところを知らないように見える。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

SHARE

Twitter
新着コラム