ページトップ

Column コラム

ホーム コラム 新ヨーロッパ通信 ドイツ・反極右デモの背景(下)
新ヨーロッパ通信

ドイツ・反極右デモの背景(下)

SHARE

Twitter

 昨年ポツダムで開かれた秘密会合で、極右勢力のメンバーが説明した外国人追放計画について、聴衆の間から抗議の声は上がらなかった。彼は北アフリカの国に数百万人の外国人を追放することを提案した。
 アフリカに外国人を追放するという提案は、1940年にナチスが400万人のユダヤ人をマダガスカルに強制移住させようとした計画に似ている。ナチスはこの計画を実現できなかったため、約600万人のユダヤ人を強制収容所に送り込むなどして虐殺した。
 会議には右翼政党ドイツのための選択肢(AfD)のヴァイデル共同党首のアドバイザーなど、複数のAfD党員が参加していた。AfD党員らは「私は個人として参加した。党を代表しての発言は一切行っていない」と弁解している。
 多くのドイツ市民はこの会合に複数のAfDの党員が参加していたことを知って、同党の危険さを理解し、抗議デモに参加したのである。ショルツ首相は1月20日にビデオ演説を公表し、「極右勢力は、われわれの民主社会の分断と攻撃を試みている。ドイツには約2000万人の外国人またはドイツに帰化した外国人が住んでいる。われわれは、彼らを守るために社会の連帯を強め、極右勢力に対してはっきり『ノー』と言わなくてはならない」と国民に呼び掛けた。首相は外国人に対して、「あなたたちはドイツに属している。われわれはあなたたちを必要としている」と強調した。
 野党キリスト教民主同盟(CDU)のフリードリヒ・メルツ党首も、「この抗議デモは、ドイツの民主主義が活力を持っている証拠だ」と述べ、抗議行動に参加した市民たちをたたえた。彼は「AfDには、正真正銘の国家社会主義者(ナチス)もいる。しかし、AfDに票を投じる市民が全員ナチスであるというわけではない。AfDは、現政権への市民の不満を悪用して支持率を増やしている」と指摘した。
 アレンスバッハ人口動態研究所が昨年12月前半に行った世論調査によると、AfDへの支持率は18%とCDU(34%)に次いで第2位。旧東ドイツの多くの州でAfDが首位にあり、9月にザクセン州など3州で行われる州議会選挙ではAfDが勝つ可能性がある。
 ショルツ政権の環境・難民政策に対する不満、深刻な不況への不安、次第に薄れるナチスの犯罪に関する記憶などがAfD支持者の数を増やしている。ナチス発祥の地での極右の台頭は、米国、オランダ、英国などでの右派ポピュリストの躍進よりも危険だ。民主主義勢力は、AfDの進撃を食い止めることができるだろうか?
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

SHARE

Twitter
新着コラム