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オランダはゴッホ絵画の宝庫

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 今年9月にアムステルダムに行った理由の一つは、ファン・ゴッホ美術館を約40年ぶりに訪れるためだった。ゴッホは1890年に37歳で自殺を遂げた時、約900点の油彩と約1100点の素描を残した。ゴッホ美術館には「ヒマワリ」や「鴉のいる麦畑」など油彩200点、素描400点が展示されている。1973年に開かれた美術館には、2015年に黒川紀章がデザインした建物が付け加えられた。毎年200万人を超える人々がこの美術館を訪れ、オンラインで予約するチケットはしばしば売り切れになる。
 展示では、病と孤独に苦しんだゴッホの生涯と作品だけではなく、彼を支えた弟のテオ、その妻のヨー、精神科医のガッシェ氏についても学ぶことができるように工夫されている。一番最後の部屋に架けられているのは、彼が1890年に描いた「アーモンドの花」だ。テオ夫妻に子どもが生まれた際に、ゴッホが贈った作品だ。水色の背景にアーモンドの花と枝が浮かび上がっており、ゴッホが愛した日本の浮世絵を連想させる。死ぬ年に描いた作品とは思えないほど明るく、未来への希望を感じさせる。テオ夫妻の支援なしには、ゴッホはキャンバスや絵具を買うこともできなかった。テオ夫妻に捧げられたこの絵は、この美術館の展示の締めくくりにふさわしいと思った。
 次に私は、オランダ南部のオテローに向かった。自然公園の深い森の中にあるクレラー・ミュラー美術館は、ゴッホの作品の所蔵点数が世界で2番目に多い。ゴッホの油彩約90点、素描約100点が保管されている。名作「夜のカフェ」や「糸杉」に出会うことができた。この豪華な作品群が、個人のコレクションであると聞いて驚いた。ドイツの資産家の家に生まれたヘレーネ・クレラー・ミュラーは、15年間にゴッホやスーラ、シニャック、モンドリアン、ルドンなどの作品約1万点を購入した。「美術品に囲まれた家を作る」という夢を持っていた彼女は、1938年にオランダの森の中にクレラー・ミュラー美術館を開いた。周囲が自然公園という美しく静かな環境の中に美術館があるのも素晴らしい。広大な森には、ロダンなどの彫刻も多数展示されている。
 南仏で客死したオランダ人ゴッホは、生前ほとんど評価されず、貧困のうちにこの世を去った。今、祖国オランダに二つの素晴らしい美術館があり、世界中の人々が訪れていることは、不遇な一生を終えたゴッホにとってせめてもの慰めであろう。
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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