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ガザの地獄(上)

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 爆撃で崩れ落ちた建物のがれきの下から、次々に掘り出される子どもたちの遺体。生き延びた子も、血と土埃にまみれている。病院はどこも重傷者であふれており、子どもたちは床の上に寝かされている。薬や麻酔薬、注射器も不足しており、まともな手当てを受けられない。両親はなすすべもなく泣き崩れるだけだ。思わず目を背けたくなるような映像が、毎日ガザから世界中に発信されている。
 10月7日に、ガザを実効支配するテロ組織ハマスのテロリストたちがイスラエルに侵入して約1200人を殺害し、約240人を拉致した。ハマスはロケット弾をイスラエルの町に降らせた。
 イスラエル軍はガザ地区に対する空爆を実施し、爆弾やミサイルで建物を次々に破壊している。すでに2万カ所の目標を攻撃した。戦車や歩兵部隊もガザに送り込み、市街戦を展開している。イスラエル軍は「ハマス幹部を殺害し、地下トンネルや司令部を破壊するのが目的だ」と説明する。だが、ある場所では、1人のハマス幹部を殺害するためにビルを爆撃したところ、周辺の教会などに避難していたパレスチナ市民約120人が巻き添えとなって死亡した。国連が運営する学校なども攻撃されている。
 ガザのパレスチナ保健省によると、10月7日からの約2カ月間に1万7487人のパレスチナ市民がガザで死亡した。ガザの人口の約2%が犠牲になったことを意味する。このうち3分の2が女性と子どもだ。つまり、女性と子どもの死者はすでに1万1000人を超えている。負傷者数は約4万6000人に達する。国連は11月13日の時点で、ガザの国連職員の死者が101人に上ったと発表している。今回の戦争の犠牲者数は、過去のガザでの戦争による死者をはるかに上回る。
 イスラエルを支持する米国やドイツ政府も、12月に入ると「イスラエルは、ガザの市民の犠牲者が増えないように努力しなくてはならない」と発言し始めた。10月7日直後、米国やドイツ政府が「イスラエルには自衛権がある」という発言を繰り返していたことを考えると、潮目の変化を感じる。米独でも、「イスラエルの攻撃方法は、パレスチナ市民の間の死傷者の増加につながっており、バランスが取れていない」という意見が強まっているのだ。
 国連のグテーレス事務総長は即時停戦を呼び掛けているが、イスラエルは国連を全く重視しておらず、外国からの非難も馬耳東風である。国際機関が手を打たないまま、世界中の人々の目の前で幼い命が次々に絶たれていく。
 (つづく)
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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