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アナログ社会・ドイツ(上)電力篇

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 ドイツの電力小売りは、日本に比べてデジタル化が大幅に遅れている部分だ。日本の大半の家庭ではデジタル電力計(スマートメーター)が、市民が実際に使った電力量を電力会社に伝えている。このため、消費者は毎月実際に使った電力に対して料金を払っている。
 ところが、ドイツでは、スマートメーターの普及率が0.3%にすぎない。ドイツは欧州でもスマートメーターの普及率が最も低い。
 私のアパートも含めて、大半の家庭が、銀色の円板がグルグル回転するアナログ式の電力計をいまだに使っている。円板を使う電力計と聞いて、「なつかしい」と感じる人もいるだろう。日本の電力会社の人がこの光景を見たら、あまりの旧態依然ぶりに、びっくりすると思う。
 ドイツでは以前の日本と違って、電力計の消費量を調べる検針員はいない。電力消費量は個人情報なので、第三者が勝手に見ることはできない。ドイツの市民は、団地の地下室などへ行き、管理人に頼んで電力計のある部屋の施錠を開けてもらい、メーターに表示されている電力消費量を自分で見て、電力会社に申告する。申告をさぼっていると、電力会社が過去のデータを参考に大目に推定するので、実際の電力消費量に基づく料金よりも高くなることがある。つまり、電気代を節約するための基本は、電力計の値をこまめに電力会社に報告することだ。
 電力会社は、消費者が申告した消費量を基にして、次の年の電力料金を計算し、12で割った額を毎月銀行口座から引き落とす。12月に客が払った額が電力料金を上回る場合には、金が戻って来る。電力料金が事前支払額を上回る時には、客は料金を追徴される。
 自分で言うのもなんだが、私はドイツの電力の買い方がうまい。その証拠に、今年の精算では、電気代が約3万円、電力会社から戻ってきた。去年も電気代が還付された。電力消費量をこまめに電力会社に申告したからだ。
 最近では電力会社のウェブサイトにログインして電力消費量を書き込むようになっているが、30年前には申告用紙に自分で電力計の数字を書いて、封筒に入れて郵便で電力会社に送っていた。
 ドイツは、密閉性の高い二重窓や、ベンツやBMWなど内燃機関の自動車のようなメカの塊を作るのは得意だが、デジタル化は非常に遅れている。まだまだアナログがはびこる国なのだ。
 (つづく)
 (文・絵 熊谷 徹 ミュンヘン在住)
 筆者Facebookアカウントhttps://www.facebook.com/toru.kumagai.92

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